2014年8月30日土曜日

Iso-Seq WholeかTargetか

大阪は梅田、阪急三番街。 新阪急ホテルとの間に地蔵横丁がある。
うっかりすると通り過ぎるような、小さい路地。
そこの角にある、「玉五郎」というラーメン屋に入った。

カウンターのみの店だが入りやすい雰囲気。
先に食券を買って店の入り口に並ぶ。 結構混んでいる。
店内、3分の1は女性客で、私の隣も女子1人だった。

煮干のだしがきいた豚骨ラーメン。 つけめんは結構太麺。
お勧めはチャーシュー、煮玉子入りの特製ラーメンと水餃子。
味がしっかり濃いので、飲んだ後のシメには向かないかな。
がっつり食べたいときにおすすめ!


さてさて、らーめんとは関係ありませんが、Iso-Seqの話をします。
アイソフォームシークエンス、の略で、いわゆる転写産物のAlternative Splicingを、PacBioで一気に読んで解析しようというアプリケーション。
以前も少し紹介しましたね。
ここで


スタンフォードのチームは、ヒト幹細胞を使い、転写産物の本来の姿、アイソフォームの姿を明らかにしようとしました。
RT-PCRでcDNAを作り、そこから直接PacBioライブラリを作製、34 SMRT Cell使ってシークエンスし、ゲノムにアラインしたら10%が新規のアイソフォームだった、というお話でした。

彼らの研究の続編がこちらです。


こちらもヒトの細胞株を使ったWhole Transcriptomeです。
この論文は、ある意味すごい。
今、PacBioのIso-Seqプロトコルでは、全長cDNAを作製した後、PCRで増幅し、その後ゲルに流すなどしてサイズセレクションするんです。
1-2kb、2-3kb、3kb以上、という風に分画し、サイズを分けてそれぞれのcDNAを回収する。
回収後はさらにPCR増幅し、1μg以上の量に増やす。

そしてサイズごとに分けてライブラリ作製 → シークエンス、という流れです。

なんでサイズに分けるかというとですね、前にも書いたかな? サイズによってZMWウェルの中への入りやすさが違うからです。
これを「ローディングバイアス」と言います。
短いライブラリほど、優先的にウェルに入る傾向にあるから、できるだけサイズをそろえてあげて、別々のセルで読む必要があるのです。

しかーし、ここに問題があります。

増幅バイアスです。

PCR増幅されやすいライブラリ配列は、どんどん増幅され、指数関数的に増えていきます。
つまり、転写量はわからなくなります。

というわけで、スタンフォード大のDr. Tilgnerらは、増幅していません。
ローディングバイアスと増幅バイアスを天秤にかけ、どちらを取るか。
転写産物の量をできるだけあるがままに解析するには、増幅はしないほうが良い。
という判断のもと、サイズセレクションはしませんでした。

数百万もの細胞を使って大量にRNAを抽出、RT-PCRでcDNAにしたあと、できるだけ増幅バイアスをかけずにライブラリを作製、シークエンスしています。

1株につき32セルを使用し、711,000本のCCSを取得、これらをゲノムにマッピングした例が下の図です。
Tilgner et al.
Exon-Intronがはっきり分かれてマップされているのがわかりますね。
これ、1本が、1分子のRNA (cDNA) を全長で読んだ結果なんですよ。
アセンブリしていません。

このような図は、もちろんサイズで分画したライブラリでシークエンスしても得られます。
誤解の無い様付け加えると、このようなWhole Transcriptomeの実験でも、サイズ分画した例はいくつもあります。 論文も出ています。
むしろPacBioとしては、どんな場合もIso-Seqは、サイズ分画を勧めているくらいです。
それは先ほど説明した、ローディングバイアスを避けるため。
アイソフォームの量よりも、種類を得る目的に使用してもらうためです。
なのでIso-Seqは、「新規のアイソフォームの種類を発見しよう!」という目的に向いています。

さて、Dr. Tilgnerらの論文は、HiSeqのデータも持っているので、アイソフォームごとの発現量推定も行っていますし、さらにアレルごとの転写産物解析にもチャレンジしています。
とはいっても結構、シークエンスコスト、解析コスト共にハードルが高いので、現実的かどうかは意見の分かれるところです。


Whole Transcriptomeはちょっと・・・ フルコースより単品が良い、ってひともいるでしょう。
見たい遺伝子はある程度決まっている。
他の遺伝子はあんまり興味は無い、というかた。
ターゲットIso-Seqはいかがでしょう?

この論文は、特定の遺伝子にフォーカスしてSplice Variantをシークエンス解析した例です。


完全長の neurexinの遺伝子配列を特異的プライマーで増やし、シークエンスします。
あらかじめ大体のサイズがわかっていますから、コントロールしやすいですね。

転写産物の長さは、4~5kbらしいです。結構長い。
PacBioシークエンスは少なくとも1パスは完全に全長を読んでいたものだけを解析に使用しています。
そうして参照配列にマッピングしたあと見てみると、Nrxn1αについては取得できた2,574本の完全長cDNAから247種類のアイソフォームを分類できました。
Treutlein et al.
ターゲットIso-Seqの利点は、全トランスクリプトームを対象にしているわけでは無いので、セル数が比較的少なく済む点です。

これは論文に出てくる数字をまとめたものですが、使用したセル数にばらつきがあるのがわかります。
6セル使ったライブラリのサイズは4.5~4.7kb、比較的長い。
1.5kbくらいのライブラリに対しては、2,3セルで十分量のデータが得られているとのこと。

Movie時間が90分ですが、今(2014年8月現在)は最高180分まで読むことができます。
なので、今同じ実験を組んだら、セルの数はもっと少なくて済むはずです。


Whole Iso-SeqかTarget Iso-Seqか?

目的によって分かれるでしょうが、どちらにしても、遺伝子の転写の姿が、アイソフォームの姿が、今までよりはっきりとわかる、このアプリケーションはとても魅力的だと思いませんか?

実際使ってみたい!
こんなふうな実験は可能か?
といったアイデアがある方は、お知らせください。
ディスカッションしましょう!


2014年8月21日木曜日

「De Novo の達人」がついに論文に!  時期を同じく羊土社からもNGS特集号が!

高槻に来ています。 でもホテルは「たかつき京都ホテル」って、高槻は大阪なのか京都なのか?
シングルが満室だそうで、同じ値段でツインにアップグレードしてくれました。
しかし、独りでツインはちょっと寂しい。

さて、皆さんは覚えているでしょうか?
昨年のNGS現場の会、「De Novo の達人」という企画。
同じサンプルを、Ion Torrent PGM、Illumina MiSeq、PacBio、Roche Juniorで読んで、達人3人がそれぞれ得意なデータを選んでアセンブルするという企画。
そして達人たちには、読んだサンプルが何なのか、ということは知らされず。

そこで見事、PacBio のデータだけを使い、正確にContigの数とサイズを当てたのが達人・笠原氏。
Master of De Novo!! わーい

で、その内容が論文になりました。



いいですねえ。こういうの。
内容については、競合商品ついて突っ込むことになって、ちょっと立場的にアレなので、皆さんで読んで下さい(笑)

そうそう、羊土社からもNGSの特集号が出ます。
『次世代シークエンス解析スタンダード』

PacBioに関しても書かれていますよ! 目次を見て下さい。リンクはここ

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Ⅴ プロトコール 環境・進化・生物資源

1 難読領域を含む微生物ゲノム完全長配列をde Novoに決定する PacBio RS Ⅱを用いたアセンブル【寺林靖宣/照屋邦子/佐藤万仁】

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いいですねえ。

えっ、私は何もしていないって?

この本に広告を出しています。デザインしました。
こんな感じに。

ちょっといいんじゃない?
でもI社には負けるかな。フォトショップがあれば・・・  これがパワポの限界?
次はもっとがんばります。

2014年8月13日水曜日

学会・技術セミナーのお知らせ(2014年8月9月)

パンケーキ、って今、はやっているんですか?
今テレビでやっているんですが、原宿のハワイアンパンケーキがすごい人気だそうですね。

10年以上前に、私がアメリカ・カリフォルニアに留学中、すごくおいしいパンケーキ屋さんがあったんです。
ボリュームがまさにアメリカンサイズで、一食分には多すぎるので、土曜のブランチに何回か行きました。
誰と行ったかって? 
 

パンケーキの話はこれくらいにして、今日はセミナーの宣伝です。


8月19日(火)、東京 「タカラバイオ技術セミナー・NGSを用いたトランスクリプトーム解析の最近の話題」 (くわしくはこちら
→テーマはIso-Seq、トランスクリプト全長解析です。一応、私が喋ります。

8月22日(金)、高槻 「日本進化学会第16回大阪大会・シンポジウムS3:エピゲノムが進化する」
詳細はこちら
→PacBio社から塩基修飾解析担当のDr. Khai Luongが話します。 彼女は25日(月)、東京にいますので、学会で話した同じ内容でセミナーをしてもらおうかと考えています。
25日、朝10時に東京のオフィスに来れる方で、PacBioの塩基修飾解析に興味のある方、お知らせください。 場所は根津です。

9月10日(水)、札幌 「66 日本生物工学会大会 ランチョンセミナー」 (おしらせはこちら
→タカラバイオ株式会社のランチョンセミナーです。 テーマがPacBioなのでここに入れてもいいかなと思いました。 私も参加したいです!

9月28日(日)、29日(月)、静岡 「第8回 日本ゲノム微生物学会若手の会」
→ディナー・ランチョンセッションで、私は行きませんがトミーデジタルのほかの社員が話します。ポスターもあるかな。 
若手の会ならではの雰囲気でディスカッションできると思いますよ。

10月はまたいろいろありますので、随時お知らせします!


ところで、パンケーキって、パンケーキそのものの味は、どこも大して変わらないですよね。
意外とシンプル。

ということは、要は盛りですよ。 イチゴやメイプルシロップ、くるみ、バナナ、ラズベリー、クリーム…。
どれだけきれいに、おいしそうに盛るか。
盛ってきれいにデコって、写メ撮って、食べておいしければ印象に残る。
何となーく、女子に人気があるのがわかる、気がする。

2014年8月9日土曜日

久しぶりに若い刺激をもらいました

こんなタイトル↑を書いている時点で老いていると思われそうですが、気持ちは20代です!

「第8回 細菌学若手コロッセウム」 に参加して来ました。

ニセコという、北海道のみならず日本を代表するリゾート地での、2泊3日の合宿セミナー。
そしてテーマは細菌学に絞られずに、今回は広く、「・・・若手の会」を代表する角界のエースを集めたエースセッションなるものも行われました。
そんな中、私も、PacBioをテーマにランチョンをしてきたわけです。
ランチの中身がすごかった。 見てくださいよこの豪華さ! 


これに、スポンサーをやっている飲料メーカー数社が、飲み物を提供してくれるんです。
だから参加者は、飲食はほとんどタダ。

で、ランチョンの中身ですが、これくらい豪華・・・とまではいかないけれど、合格点だったかなあという感じですね。
参加者は、必ずしも次世代シークエンサーを使っているというわけではないことが、行きのバスで隣になったひとからわかりました。 うーむ、少し説明が必要だなあ。
ということで、TOMYがなぜシークエンサーやっているのか、Pacific Biosciences とはどんな会社なのか、そのあたりから始めました。

これは、PacBioの本社がFacebookの近所にあるよ、ということから入ろうかと思って作った表紙

これは、各シークエンサーの、リード長とランあたりリード数をグラフにした絵を良く見るけれど、縮尺が良くない! と思っていたので、描き変えた

ちゃんとしたテクノロジーや論文紹介もありますよ。例えば今年上半期の有名なメチレーション論文について

ただ、ランチョンというのは頭を休めるためのセミナーですので、硬くならない程度の話にしました。

ランチョンには入れなかった、アプリケーションに、16S全長シークエンスがあります。
今回も、セッションの後半はメタゲノムの話が多かったのですが、メタゲノムの主流はやはりrDNAの16S配列解析です。
16S配列でも、Variable Regionと呼ばれる配列の一部をシークエンスして、細菌の系統樹解析を行います。
今の研究者の大まかな意見では、MiSeq、Ion PGM、このベンチトップシークエンサーでかなり正確かつ十分にメタゲノム解析はできる、ということらしいです。
もちろん目的にもよるでしょうね。

PacBioみたいに、16Sの全長配列を読むことが必要になるときはあるのでしょうか?
16Sだけでなくても、細菌分類に必要な配列であれば何でも良いのですが・・・。
1遺伝子の全体を読みきることは、10Kbくらいなら問題ありません。
誰かやりたいひといませんかね。

さて、シークエンスメーカーは他にも、イルミナさんとライフテックさんが参加していました。
企業ならではの「あるある」話。 
アカデミアの博士課程の若手に、将来の進路、もし企業に来たら・・・ などの話をして、人生の先輩ぶることもしてきました。

そして2夜連続の飲み会は3時まで!
泊まりだと、安心して飲んじゃうんですよね。
でも翌日は朝のセッションからちゃんと参加しましたよ。
ここは、会社で鍛えられましたから。

そして、普通の学会ではありえないんですが、研究者以外の特別ゲストとして、石川 雅之先生が参加されました!
この分野なら知っていますよね?「もやしもん」 
とっても気さくでおもしろい、サービス精神溢れる方でした。
参加者全員に名札を書いてくださり、多謝! (最初の写真に写っているやつがそうです)


北海道大学
人獣共通感染症リサーチセンターのお土産
クリップと、エボラウイルス型ストラップ


それから最後に、若コロ運営スタッフの皆様、本当にお疲れまでした!
今回ランチョンに呼んで頂き、ありがとうございました!


追伸

まだ北海道満喫してます : )