2017年8月28日月曜日

学会・展示会情報の最強検索ページはここだ!

残暑厳しいですが8月も今週で終わりですね。
秋は学会シーズン! 先生方も、我々企業も忙しくなります。

星の数ほど多くの学会がある中で、それらをまとめたサイトは意外と少ないと思います。
皆さんはどんな学会がいつあるか、どうやって調べていますか?

とあるPacBioユーザの方からお聞きしたのですが、冨島海運株式会社のウェブサイトが結構網羅されています!
冨島海運さんといえば、展示会場で我々企業が展示している実機やデモ機を運搬してくれる輸送業者さんです。
なので冨島さんが担当されない学会は載ってないのですが、それでも結構な数を集めています!

医学系に絞れば、大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN)のサイト、学術集会・研究集会等一覧もすごく網羅性が高い。

でも、微生物から植物、動物、メディカル、有名学会から若手研究会まですべてをカバーしているサイトはありそうで無いですね。


さて、私たちはいろんな学会の先生方からスポンサーを依頼されたりするのですが、お断りする大きな理由のひとつはタイミングです。
他の学会と被っていては物理的にダメですが、もう一つ、依頼されるタイミングが遅いとかなり難しくなります。
例えばうちでは、2017年に出展する学会は、2016年12月にはほぼ決定しています。
この業界はわりとそういう会社が多いです。

なので、もしあなたが次の学会の運営担当になったとして、企業からスポンサーを得たい場合は学会開催年の前の年にお願いすると、得られる確率が高くなるかもしれません。

あとこれは個人的な意見ですが、無料オプションとして、

  1. 企業にも発表の場をつくる(セミナーなどで発表できると宣伝効果が高い。ただし、ランチョンは弁当代経費が結構かかるので嫌がる企業が多い)
  2. 学会参加証をつける(企業も最新学術情報を勉強できる)
と、良いかもしれません。
社内的には「私は仕事で行きます。決して学会出張に乗じての飲み会のために行くわけではありません」という理由付けが実は一番大事だったりするので。
この点、NGS現場の会は良いお手本でした。

2017年8月14日月曜日

動物でもゲノムサイズって様々ですね & PacBioセミナー録画

お盆休み。日本民族大移動。おかげで都内は空いてて快適!
今年は東京はあまり暑くないな、と軽く思っていたら、湿度が高いせいでしょうね、危うく熱中症になりかけました。
公園で2時間近くもフリスビーやっていたらそうなるか。

休み中のひとも多いと思うので、軽い話題。
哺乳類のゲノムサイズ、ってどれもヒトと同じくらいって思っていませんか?
私もちょっと前まで、哺乳類は大体3Gb って思っていたのですがとんでもない!
先月のDovetailのユーザーミーティングでリスを読んでいたひとは、ある種のリスのゲノムサイズは6Gbあるって言っていました。

この絵はSNSで見つけました。ゲノムサイズの面白い示し方ですよね。
プレゼンのネタの参考になります。

それにしても、ゲノムサイズが体のサイズに比例しないのは不思議です。
哺乳類じゃないけど、バッタが7Gb以上もあるなんて。
それに比べると、ハチドリは1Gbちょっとなんですね。あんなに激しく羽を動かす鳥なのでエネルギー相当使ってそう。でもゲノムサイズは小さい。

ゾウがヒトより大きいのは何となくわかる。耳と鼻が大きいから(笑)
タコがもっと大きいのは足が8本もあるから(笑笑)
(じゃあイカはどうなんだ? ムカデは?)

ゲノムサイズが大きいと、物理的に大きな核が必要になりますよね。細胞分裂で染色体全部がきちんと分かれてくれない可能性も高い(一部の植物やアメーバなどでは、きちんと染色体がわかれなくても生きていけるものもあるそうですが)。分裂にエネルギーをたくさん使いそう。
そんなリスクがあっても、大きなゲノムサイズを維持するにはやはりそれなりの理由があるのでしょうね。


話題代わって以前、アメリカ東海岸でユーザーミーティングがありました。
そこで使用されたスライドや、一部録画が公開されたのでお知らせします!

この録画は、PacBioのSarahが、二倍体のアセンブリについて、Falconアセンブリのアルゴリズムからアセンブリの評価方法、NCBIへの登録方法について喋ったものです。
こちらから見ることができるのでどうぞ。

スライドはこちらにUpされていますのでご自由にどうぞ。

2017年8月8日火曜日

クリニカルシークエンスで考えること

先週末、クリニカルシークエンスに関する雑誌をちょっと読み、遺伝子検査会社のCEOのインタビュー録音を聞きました。どちらもウェブからの情報です。

雑誌とはこちら、Clinical OMICs 今月号です。フリーで読めますよ。
色々面白い記事がありますが、ざっと見て、自分の興味のある記事だけをつまみ読みしました。
もう一つのインタビュー録音というのはこちら、medelspod.com の、Making Genetic Testing Mainstream Medicine with Sean George, Invitae 
余談ですがたまに、英語の勉強に、と思ってこういうのを読んだり聞いたりしています。
興味のある分野だと頭に入ってくるのが違いますね。ただ、仕事感が半端ないので週末の勉強には向かないかも。

クリニカルシークエンスで皆さん先ず悩むこと、というと思いつくのは、

  • 全ゲノムでやるかエキソームでやるか
  • 偶然見つかった変異(incidental findings)の取り扱いをどうするか
  • 増え続ける莫大なデータをどうさばくか
だと思います。これは世界共通の悩みみたいですね。
まず、全ゲノムを読むかエキソームを読むか問題は、単純にコストの問題だと思います。
いくら1000ドルゲノムとか言われていても(NovaSeqなら100ドルゲノム?)、そのコストを実感するには相当の初期投資が必要。
実際に数千人規模のゲノムプロジェクトでは、数十人~多くても数百人を全ゲノムで深く読み、残りの数千人は薄く読む、ということが行われていると思います。これはコストの問題です。

臨床に用いるためには深く読む必要がある、と思いますが、それには日本円で数十万円以上かかるでしょうし(もしかしたら100万円以上?)とても保険では賄えきれない。

そこで現在、より一般的に読まれているのがエキソーム。
これなら安価に深いカバレッジを読むことができる。
しかしもちろんエキソームは遺伝子のコーディング領域しか読んでいない。

Incidental findings も大きな問題で、例えば、ある疾患の検査で患者さんが自分のゲノムを読んだとする。そして、その疾患の原因遺伝子型がわかって、適切な治療方法も選ぶことができた。
でも同時に、別の疾患のリスクも高いことがわかってしまった。この新たにわかった疾患の治療方法は現在まだ無い。死亡率も高い。さて、この事実をドクターは患者さんに伝えるべきか否か? リスクがどれくらい高ければ伝えるべきか?
検査対象でもなかったのに、不治の病を突然告知されてしまう不安は、人それぞれだろう。僕は知りたくない。知ってしまったら生命保険にも入れなくなってしまうだろうし。

パネルシークエンスなら知りたい病気の遺伝子だけ調べてもらえる。そんなニーズ?もあるだろうからこれもクリニカルの現場では人気が高い。

以上は主に、ショートリードシークエンスの話。
ロングリードをクリニカルシークエンス、ヒトゲノムの変異解析に応用しようという動きは今年大きく動いています。
なぜかというと、ショートリードでとらえきれない変異でも病気に関連する変異(多くは数百bpのInDelや、繰り返し配列、さらに転座やSegmental Duplication)が多く見つかってきたから。
もちろん、病気に関する変異の全てを見つけることは、現在はまだ不可能なので、「変異の何%を見つけた」と言うことはできないという。

さて、これからゲノムデータはどんどん増えていくことでしょう。
一説には、2025年頃までには、ヒトゲノムのシークエンスデータ保存に必要なストレージ容量は、2~40エクサバイトになるそうです(Natureのこちらの記事
YouTube、Twitterでアップされるデータ量を遥かにしのぎ、天文学で使われるデータ量をもしのぐとのこと。

エクサバイト、ってペタバイトの1000倍だから、そう考えると大したことないな。
このNatureの予想は2015年だからそんな古くはないけれど、もっと、ゲノムデータ以外のフェノタイプ的アノテーションデータ(何だろう、動画かな?心電図とか)がパーソナルゲノムデータに付随してそれこそひとりのパーソナルゲノムデータが1ペタとかになるんじゃないか、って妄想した週末でした。

ちなみに、「エクサバイト:服部真澄 角川書店(ISBN-10: 4043944187)」というSF長編小説がありますがお勧めです。10年くらい前の小説ですけど今でもいけると思う。
クリニカルシークエンスとは直接関係ありません。念のため。


2017年8月4日金曜日

PacBio 2017年後半戦が見通し明るいそのわけとは?

これを書いている今日は8月4日、昨日のPacBioの株価は前日比で14%も上昇しました。
こういう時は何かニュースがあったのでとりあえず本社のサイトやSNSをチェック!

アメリカ時間で8月2日に第二四半期の発表がありました。
CEO自らが投資家向けにプレゼンする場で、これは録音されて、翌日には誰でも聞くことができます。 一応、視聴するには登録が必要

数字については、私はその辺(アメリカ企業の経営に関する数字)は詳しく無いので評価できません。
でも、悲観的か楽観的かというと、明らかに楽観的な見通しでした。
このプレゼン時間の半分以上が投資家からの質疑応答になるのですが、厳しくは無かったです。

で、良いニュース(これが今回の株価14%UPにつながっているかは不明)はこちらです。

  • 装置の売り上げは顧客のバジェットタイミングによるので不安定だが、試薬売り上げはSequel台数が増えるにしたがって着実に増えている
  • 中国のNovogeneがSequelを10台追加で注文(これで20台購入!)するなど、中国の売り上げが堅調
  • Sequelの新ソフトウェア version 5 のアップデートが始まり、テストデータはとても良い
全世界でRSIIとSequelを合わせると、現在300台以上が導入されています。
この数字は5月のものなので、最新ではもっと行っているはず。
装置が増えればそれに伴い試薬の購入も増えるわけですが、この傾向はシークエンスラボで顕著だそうです。

どういうことかというと、一般のアカデミアは、プロジェクト単位でシークエンスが行われるので、プロジェクトが終わると一息つくことが多いですね。
日本以外でもこれは同じで、プロジェクトごとに予算が付く。そうすると、それが終わったとたんにシークエンスしなくなる。

ところが、営利企業やシークエンスコアラボでは、ひとつのプロジェクトに左右されないので通年シークエンスされるとのこと。
日本でもまあ、そんな感じでしょうか。年度末は忙しい、というバラつきは多少あるでしょうが。

中国のNovogeneという会社、これは世界最大のシークエンスラボのひとつです。
ここ2年くらいで、PacBioの最大の顧客になりました。
Sequelを10台保有し、さらにこの度もう10台の購入を決定! 世界一、Sequelを保有する機関になりました。
彼らがなんでこんなに(20台も)Sequelを買ったのかというと、ロングリードに積極的に投資しているからです。ちなみにここには政府系の投資会社もお金を出しているそうです。
Novogeneでは、中国人ゲノムを1000人分読み、構造変異を解析し、世界初の構造変異データベースを完成させる、という壮大な計画があります。
ここに、Sequelが使われるのです。
さらに、Novogeneはシークエンス受託解析企業なので、世界中から顧客を集め、世界一のシークエンス受託会社になることを目指しています。
そんなこんなで今、PacBioのRevenueの25%は中国から得ているそうです。

中国だけでなく、世界の営利企業は積極的にSequelに投資する傾向にあるそうです。

HistogeneticsというアメリカのHLAタイピング企業は、ショートリード数十台に加えてRSIIが動いています。もちろんSequelも。
これは、HLA遺伝子の完全シークエンス(ショートリードでどうしても型が判定できないような難しいローカスのシークエンス)のためにPacBioのロングリードが絶対必要だ!ということで、アグレッシブにRSII、Sequelが使われているそうです。


これらの発表がもしかすると、昨日の株価14%アップに影響したのかな?

PacBioは、先月Sequel用に、これは解析ソフトと装置のソフトの両方で新しいソフトウェアをリリースしました。
昨日のCEOのプレゼンでは、このソフトが順調に動いていて、ある顧客では平均リード長33kb、またある顧客では1セルあたりの出力が15Gbに達したと言っていました。
まあ、これは極端な例でしょう。
実際は、良くて平均12kb、N50 で20kb、塩基出力も良くて10Gb くらいかな、という感じです。
でも2017年の末には、わかりませんよ。

CEOははっきり言っていました。
2018年末までには、今の8倍のウェルを持ったセルが登場し、新試薬などで今よりスループットが30倍Upすると。