2017年10月17日火曜日

植物ゲノムが熱い件(2) ドリアン!

シンガポールの市場をぶらついていると、たまに悪臭が鼻をつくことがあります。
温泉の硫黄の臭いと下水とブルーチーズの臭いのミックスというか、そんな感じの香りを感じたら、犯人はドリアンです!

「果物の王様」
いつか食べてやりたいと思いつつも、あの匂いで食欲がわかないので未だ食べるに至らず・・・。
そういえば、シンガポールの地下鉄には、「No Smoking, No Drinking, No Durian」
って書いてあるんですよ。

そんなドリアン、ドラフトゲノムが読まれました!

シンガポールとマレーシアのチームが、PacBioとDovetailをメインにゲノムを決定!
論文はOPENです

K-mer解析によるとゲノムサイズは約738Mb
153カバレッジのPacBioデータを使ってFalconアセンブリ、そしてFalcon Unzipでポリッシュ。
そのあとDovetailのChicagoライブラリとHi-Cライブラリでスキャフォルディング。
スキャフォルドN50は驚きの22.7Mb!
Bin Tean Teh et al., Nature Gen. 2017
この論文、Falconのパラメータとか、Dovetailサービスを使った場合の論文記載方法とか、その後のDuplicationのチェック方法とか、ゲノムアセンブリをやっているひとには役に立つことがたくさん載っている、と思います。

この論文ではゲノムを読んだあとに、ドリアンの匂いの元、のVolatile sulfur compounds産生に関わる遺伝子の異種間比較解析(コピー数解析)を行っていて、そちらも面白いですよ。
匂い自体は複数の化合物が複雑に合わさってできますが、そのひとつの遺伝子のコピー数がドリアンでは多いらしい。

これを読んだあとはドリアンに挑戦したくなる、
と思ったわけでした。

2017年10月16日月曜日

植物ゲノムが熱い件(1)

10月7、8日に岩手大学の育種学会に行ってきました。
「ゲノム育種」という言葉はNGSの登場前から結構昔から言われてきたみたいです。
親戚に農家もいないし、農学の知識が無い私なりに理解したのは、育種にはどうも、1.収量を多くする、2.病気や環境ストレスに強くする、という2つの大きな目的があるようです。
イネなんかを想像するとわかりますよね。北海道で栽培できる品種はどう考えても寒冷環境に耐性がありそうです。
イネは昔と比べて収穫量が増えたと、中学か高校の教科書で習った記憶もあります。

ですが昔の品種改良は、交配して育ててみないとこの形質が遺伝したのかわからなかったから、手間と時間がかかっていた。
それを今では、ゲノムを読んで有用な形質遺伝を持つDNA配列(DNAマーカー)がわかってさえいれば、交配したあと、個体がまだ小さいうちに遺伝子検査すれば(スクリーニング)どの個体に有用遺伝子が含まれているか、がわかる。
そうしてこの個体を増やしていけば、有用な形質を持った「品種」を効率的に作ることができる。
これを「ゲノム育種」という。

そこで、有用な形質遺伝を持つDNA配列、を探すためにたくさんの育種研究者が日々シークエンスをしている。
んー、あってるかな?

さて、育種学会のポスターで、信州大学のパパイヤの性に関する発表がありました。
オス、メス、両性、の3つの性が普通にあることに驚き!
今度パパイヤを食べるときは友達に自慢しましょう。

植物のゲノム解析は、1.サイズが大きい、2.リピートが多い、3.倍数性が複雑、などの理由でとっても大変。
なのでゲノム配列がたとえわかっていなくても、皆さんいろいろ工夫して(妥協して)遺伝解析をやっているなあ、と実感しました。
でも皆さんならもう、PacBioとDovetailを使えば結構ちゃんとしたゲノム配列が決定できることを知っていますよね?


さて、PacBioのウェビナーの宣伝です。
10月24日と31日に、うれしくも日本時間に合わせて動植物ゲノムアセンブリのウェビナーがあります。
1回目(10/24)
"SMRT Sequencing Applications in Plant and Animal Sciences: an Overview"
by Emily Hatas, Director, AgBio, Vertical Marketing, PacBio
登録はこちら

2回目(10/31)
"Understanding, Curating, and Analyzing your Diploid Genome Assembly"
by Sarah B. Kingan, PhD, Bioinformatics Scientist, Applications, PacBio
登録はこちら



2017年10月4日水曜日

ASHG2017でのイベント情報

すっかり涼しくなってきたな~と思えるときもある10月。
10月と言えばアメリカ人類遺伝学会(ASHG)。
毎年恒例で多くの日本人研究者も集まりますが、今年は特に多い。
場所がフロリダ州オーランドだからでしょうか?

ということで、PacBioのイベント情報をお知らせします。
ASHG学会に行く人も行かないひともぜひチェック!

このページ行けば全部書いてあるんですけど、まとめますね。

ワークショップは10/18(水)の現地時間12時半から
テーマはヒトゲノム構造解析
Cas9を使った配列特異的ターゲットシークエンスを使って脊髄小脳失調症タイプ10のメカニズム解明に挑む例や、大きなゲノム構造変異と知的障害の関係性の研究、1000人ゲノムプロジェクトの最新情報など。
特に1000人ゲノムの発表は、今年HUGOのPresidentでもあるDr. Charles Leeです!
参加はこちらから、学会には行けないけど後で講演を聞きたい!というひとも、レジストして
Not attending. Send the recording
を選択すればOKですよ! (もちろん参加したひとにも録画のリンクが送られてきます)

それ以外の注目イベントはこれ!

10/19 11:00 am-12:30 pmの Concurrent Platform Session “Advances in the Genetics of Autoimmune Disease,”では、“The MHC Diversity in Africa Resource: A roadmap to understanding HLA diversity in Africa,”(Martin Pollard of the Wellcome Trust Sanger Institute)というタイトルの発表があります。PacBioを使ったMHCシークエンスの実例が示されるそうです。

同日午後4:15-6:15の Concurrent Invited Session “Analysis of Cancer Genome Variation Using Long-read Sequencing”では、Dr. Fritz Sedlazeck (Baylor College of Medicine)、Dr. Jacques Banchereau (Jackson Labs for Genomic Medicine) らによるガンゲノムへのPacBioの応用例がこれでもか!と発表される予感。

Dr. Xufeng Zhao、Dr. Mark Chaissonらは、the Human Genome Structural Variation Consortiumを代表して, “Comprehensive Discovery of Structural Genomic Variants Through Integration of Multiple Sequencing Platforms,” というタイトルのポスターを18日の 午後2:00-3:00 のポスターセッションで発表するそうです (Poster #1501).
彼らは最近、3組のトリオの全ゲノムをPacBioで読んで解析し、1000 Genome Projectのショートリードデータ解析よりも10倍以上の構造変異を見つけたとして bioRxiv に発表。この論文はチェックしているかたも多いでしょう。

PacBio社からの注目は、Tyson Clark が “Targeted Enrichment Without Amplification and SMRT Sequencing of Repeat-expansion Disease Causative Genomic Regions” というポスターを18日の 3:00-4:00 pm で発表します。
これが例のCas9ターゲットです!(Poster #1480).

さらにさらに、初日17日(火)の午後1時から4時にあるGenome Reference Consortium (GRC) & Genome in a Bottle consortium (GIAB) Workshop も見逃せませんよ。
ヒトゲノムリファレンスのアップデートが話し合われるとても面白いワークショップです!PacBioのロングリードも大活躍しています。

と、いろいろ書きましたがプレスリリースにも書いてありますので時間がある方はどうぞ。
PacBio関連のプレゼンだけで約30もあるそうです! 全部をフォローするのは難しいけれどできるだけ聞いてきます。