2020年2月9日日曜日

業界話シリーズ:いまだに飲みニケーション?

今日はお酒の話。みなさんはお酒飲みますか?飲むとしたら何が好きですか?
ビール、ワイン、日本酒、焼酎、泡盛、ウイスキー、カクテル、ハイボール、、、

私はビールはスタウト以外なら何でも。ワインは詳しくないけど甘すぎなければ何でも。日本酒はこだわりないけど甘くないやつなら何でも。焼酎はお湯割りが合うなら何でも。泡盛はサンエーに売っているようなお手頃なものしか飲んだことないけど、今のところ何でも。
基本だいたい何でもいけますが、これも前の会社、トミーデジタルバイオロジーにいたおかげです。いい意味で(重要)。

でもイスキー飲めるようになったのは比較的最近です。海外のひとと飲むと途中からウイスキーになることがあるんですが、彼ら薄めないんですよね。基本ストレートかロック。だから私もストレート、ロック、そしてハイボールでしか飲まない。

で、この業界の人は良く飲む。先生たちも良く飲む。飲み会が好きな人が多い。とっくに死語だけど飲みニケーションが生きているですよね。
飲んで気が大きくなって色々と失敗することもあるだろうけれど、ここでは特に気をつけるべきことを書いておきます。

その1、飲み会の場所は大事

良くあるのは学会とかでみんなが集まると自然発生する飲み会。でもここは一番気をつけないといけない。学会で集まるということは「関係者」が多く集まるということ
博多のような規模の都市でさえ、学会があるときは飲み屋で偶然先生と遭遇、ということが良くあります。話す内容に気をつけましょうねー

僕が先生と遭遇した経験から気をつけたほうがいい都市:仙台、神戸、博多
理由:都市のサイズがコンパクト。結構な高確率で学会参加者と遭遇する。
特に、おしゃれなビアバーなどノンスモーキングのお店は先生との遭遇率UP
逆にスモークOKなお店は業者関係の営業マンとの遭遇率UP
僕はタバコ吸わないので、特に先生たちとばったりお店で出会ってしまうのかも。
あと、札幌、浜松、岡山、で学会があったら知っている人と店内で会う確率はほぼ100%でしょうね。

その2、飲み会で話す内容は

酒の席ではつい心が大きくなって、会社の愚痴とか(大学職員なら大学の愚痴とか)を言っている人を見かけますが、あまり言わないほうがいいです。明らかに他に誰もいない店なら別ですが、個室でも隣に誰がいるかわからない。聞こえてきます。

ネガティブなことを言わないようにしていると、自然とポジティブになって、酒の席で話す内容が楽しくなる。大学の先生たちと飲むと、専門の話で盛り上がることが多いですね。農学系の先生からトマトとメロンの育種の話を1時間も聞いたり、微生物系の先生とは腸内細菌叢の話をして若干店に迷惑かけたり、そんなこともありました(笑)

私たちは競合他社の人とも飲み会します。そういう時は話の内容にも注意します。内容はバイオ業界全体の流行とか、こんな会社知ってる?という話とか、これからはこの技術がトレンドになると思うよ、というのが話してて楽しいですね。

あーだいぶ酔ってきたなと感じたら、ここから先は仕事の話はやめましょう、という感じになって心にブレーキをかけます。たいていは、出張先で見つけたお店のことや今はまっていることなどプライペートな話をして盛り上がることが多いですね。

その3、いろんな年齢層の人と飲もう

これは日本社会全体の人口構造にもよるのかな。普段は圧倒的におじさん世代が多い。僕が飲む仲間もたいてい40代を真ん中にして30代から50代の間。でもたまに60代の人生の先輩や、20代のフレッシュマンと飲んでいると楽しいものです。
先輩からは色々と業界裏話を聞いたり。フレッシュマンからは最近の流行りを聞いたり。

「最近は若い人は飲みに行きたがらない 」ということもたまに聞きますが僕の周りではそんなことないです。先輩がおごってあげれば、よっぽど嫌な先輩で無ければついてくると思うけどね。相手が20代なら先輩は100%おごってあげましょう! 

2020年1月20日月曜日

業界話シリーズ:メーカーのひとはなんであんなに転職するの?

私もひとのこと言えませんが、バイオ業界のひとは転職が多い。何でこんなに頻繁に転職するの?っていうほど繰り返しているひとも多い。特にメーカーは多いですよね。
なんででしょう? 

ここから先は僕の想像ですが、
理由1:新しいことへの好奇心が強いひとが多い

バイオ業界はITなどと同様、最先端技術を扱っています。だから常に勉強していないと追い着いていけない。新しい情報を仕入れているうちに自然と、「これからはこれが流行るな」という感覚を持つようになる。(ま、大抵は外れるんですが)


理由2:会社を越えた横のつながりが広い

会社を越えた横のつながり、というのが重要です。同じ会社の中ではどうしても視野が限られてしまうので、同業他社と情報交換したい。そんな場が結構あるんです。学会やセミナーの懇親会とか、有志の飲み会とか、そのまた二次会とか。
そういうところで昭和的な飲み方をするひともいれば、本音しか言わないひともいる。みんなストレス抱えているんだなー、って。
ま、飲み方はこの際どうでもいいんですが、要はたとえ競合同士であっても意外と仲良いんです。狭い世界ですし、外資ならみんな思う、いつ買収されて「昨日の敵は今日の友」になるかわからない。

理由3:感覚がマヒしてる(良い意味で)

笑っちゃいますけど、周りに転職ばかりしている人がいると、自分もチャレンジしてみようかな、とだんだん思うようになるんです。転職って、人生にとって大きな決断だし、慎重にやらないといけないことです。それはわかっている上で、でも今チャレンジしないと一生その時は来ないかな、って思うようになる。
理由1のように好奇心が強く新しいことにチャレンジする傾向にある人が、理由2のように社外のひとたちとの情報交換を通じて、だんだんと転職できるかなーと思い始めて来た時に、何かの良いチャンス(条件)が現れる。

理由4:常にどこかポストが空いている

どの業界もそうでしょうが、ライフサイエンス業界も人不足です。そんなに贅沢を求めなければ自分に合ったポストは見つかると思います、今はね。将来はわからない。
そんな情報はさっき言った、会社を越えた横のつながりで得ることもある。

正直、競合に転職するってどうよ?

これはですね、特に外資なら良くあることなんです。もちろん職務上知り得た情報を漏らしたらいけません。その辺は各社ちゃんとしていると思います。ただ、営業マンならお客さんの情報、サポートなら製品の情報を細かく記憶しているでしょうからその辺は転職先で有利でしょうね。
ただ、これまでディスっていた競合製品を今度は褒めて、これまで良いと品物と宣伝してきた製品をディスることになるんですから、私には正直、、、無理です。そこ割り切れれば良いんでしょうが、ちょっとできない。


最後に、転職の理由は人それぞれでしょうが、私の周りの人は、今よりもっと上を目指すとか、もっと面白い事をしたいとか、別な方法で社会貢献したいとか、そういうポジディブな理由で転職しているひとが多いですね。後ろ向きな理由での転職はあまり聞かない。人生を楽しくしたいひとが多いのかも。

結局、バイオ業界で転職するひとが多い(ように見える)のは、

  • ちょっとキャラが強いひとが
  • この狭い業界で
  • 何回か転職するから、目立つ!

ということだったりして。ついでに他業種の転職状況も知りたいなあ



2020年1月18日土曜日

業界話シリーズ:研究用の装置や試薬は日本で買うとなぜ高いのか

研究用の装置や試薬:日本で買うとなぜこんなに高いの?

お客さんから良く聞かれる質問・というか不満で多いのは、
「同じ製品を日本で買うと何でこんなに高いのか?」です

理由はたくさんありますが、簡単にいうと、輸入しているからです。もちろん商習慣(代理店システム)も関係します。

日本に支社が無い会社の製品などは、
  1. 製品を輸入代理店が輸入する
  2. 輸入した製品をディーラー(販売代理店)に売る
  3. ディーラーがエンドユーザー(大学や研究所)に売る
  4. アフターサポートは輸入代理店が行う
代理店、というのは実は種類があって、我々は輸入代理店販売代理店と区別しています。海外から輸入手続きをするのが輸入代理店で、国内で実際のユーザーに販売するのが販売代理店。輸入して直にお客さんに販売している業者もありますが、輸入だけしてお客さんへの販売は大学に出入りしている業者さんにお願いするケースの方が多いです。

通常、大学に毎日出入りしている業者さん(ディーラー)は、製品のサポートは普通しません。いろんなメーカーの製品を先生に紹介して、見積もり作成、先生からの注文、納品を代行します。なので先生から見たらディーラーさんから物を買っているイメージでしょうね。ディーラーさんは扱う製品が膨大なので、どれか1社の製品を一押しすることはあんまりありません。

ディーラーさんは輸入代理店から製品を仕入れます。輸入代理店は通常、製品のことをメーカーと同じくらい詳しく知っていて、サポートもできる。なのでお客さんの所に行って製品の説明をするのは輸入代理店のひとが多い(私も前職ではそうでした)。お客さんから見たら、輸入代理店=メーカー。

輸入代理店はメーカーから製品を仕入れます。海外メーカーは、日本に支社がある場合は別として、普通は最初代理店システムを取ります。これはほぼ万国共通。なぜかというと、国によって税金やビジネスのシステムが異なるから、いきなり海外に支社を持つのはリスクが高いんですね。


ではここから、日本の例で、どのようにして海外製品がお客さんの元へ届けられるのかを見てみましょう。

輸入手続き

輸入代理店は、輸入に関わる全ての手続きを代理で行います。
このへんは契約によるのですがたいていの場合は、FOB(Free on Board=本船渡し)です。調べると「これは輸出する港で、買う側の指定する船舶に貨物を積み込むことによって契約が完了し、運賃および保険料は買い手が負担します」とあります。FOB以外にも色々と種類あるんですけど、FOBが一番多いので。

簡単に言うとアメリカから輸入する場合、アメリカの空港や港まで、輸入する日本代理店が輸送業者を手配します。FedEXとか近鉄とか色々あります。
そこからの輸送費、保険、税金、通関諸経費、成田空港に着いた後の倉庫の確保、冷凍品ならドライアイスの入れ替え、地方ならそこまでの輸送費、などなどかかる経費は輸入代理店が負担します。(輸送費も、1トン近い重さの装置はバカにならない!)

まあ、これらは必要経費。輸入ってすごい大変なんですよ。

支払いは基本USドル(ヨーロッパの会社の場合はユーロ)。だから為替相場も関係してきて、だいたいここ数年の傾向を見て会社が決めています。安全を見て、銀行レートの10円から20円上を使っていると思います。円安になったからってそう簡単に値上げはできない。だから、「最近円高になっているのに、輸入製品なのになんで安くならないの?」という質問があると思いますが、円安になるリスクも抱えているので仕方ないのです。

ちなみにスーパーで輸入牛肉やワインとかが安く売られているのは、円高よりも関税が安くなったおかげが大きいですよ。為替はちょっとしたことで大きく変わりますが税率は当面変わりませんから安定している。価格に反映しやすいのです。

仕入れの際の値引き?

輸入代理店が製品を海外メーカーから仕入れるとき、本国の定価より安い価格で買っていると思いますか? それは実は、メーカーによって様々なんです。あるメーカーはUS価格の50%で輸入代理店に売ってくれるし、あるメーカーはディスカウント無しです。 私の経験では、平均すると単価が安い製品はディスカウント率が高くて、単価が高い製品は値引率低め。20%程度の値引率で仕入れているケースがもっとも多いのではないかな?

本国定価1万ドルの製品なら、仮に20%引きとして8000ドルで輸入。そこに輸入にかかる経費が仮に500ドルかかったとします。8500ドルの製品を日本で売ることになる。
ドルの銀行レートが110円なら、仮に120円で計算したとして、102万円。
これをスタートに考えましょう

マージン 利益

マージンは2通りあります。まずは輸入代理店が欲しいマージン。次に販売代理店が欲しいマージン。
さて、これから例に出すマージン率は、わかりやすくするため&計算がしやすいように30%、20%としています。この数字が現実的かどうかはみなさんの想像にお任せします。あくまで例ですよ。明日ラボに来た営業マンに数字聞かないでくださいね。

輸入代理店は販売代理店に売ります。その時のマージンを仮に30%とします。
輸入代理店はさっきの102万円に利益を30%乗せて、販売代理店に売りたい、とします。なぜなら営業・マーケティング・サポート経費をこの中から捻出し、かつ純利益もこの中から出さないといけないのです。
102万円+(新価格 x 0.3)=新価格
この時点で価格は145万7143円 (102万割る0.7)
端数切り上げ146万円

販売代理店はこの価格で輸入代理店から買って、大学に売らなければいけません。今の日本の大学では、業者さんと呼んでいる販売代理店を必要としているケースがほとんどです。彼らがいないと日本の大学の購買システムは恐らく回らない。
販売代理店も、日々の営業活動を行っていますのでマージンは欲しい。仮に20%とすると、146万円+(販売価格 x 0.2) =販売価格
はい、182万5000円

これが、定価になります。ちなみにこの定価は輸入代理店が決めます

30%とか20%とか、マージン取りすぎじゃない? と思われたかた、実際はここから値引きがありますよね。エンドユーザーには5%引きとか10%引きとか、キャンペーンや大量購入の場合などにはもっとあるじゃないですか。

割引率を見越してのマージン設定なのです。このマージン率を減らすと、値引きがほとんどできなくなります。ですから実際は30%、20%ではなく、25%、15%かそれ以下のケースが多くあると思います。
なので、業者さんに割引をお願いして、「ごめんなさい、これ以上は難しいです」と言われたら本当に無理です。「ちょっと社内で相談してみます」と言われたら、「難しかったら結構ですよ」と優しい声をかけてあげてください。その声で救われる営業マンは多いと思います。

さて、上の例だとUS定価1万ドルの製品が日本定価182万5000円になったわけです。
もちろん、輸送費をまとめるなど工夫したり、為替設定を見直したり、メーカーからの卸値を交渉したりすれば、もう少し下がる可能性はあります。

あと、これはあくまで例なのはわかりますよね。全ての1万ドルの製品が182万円くらいで売られているわけではありません。試薬、装置、ソフトウェア、在庫が持てるものや持てないもの、手間がかかるものやそうでないもの、によって価格の決め方は様々です。
でも何となく価格決定の雰囲気を知ってもらえると幸いです。

輸入代理店が一度定価を決めてしまうと、それをカタログに乗せて、販売代理店やお客さんに配る。大学はこの定価に基づいて予算を組む。高額製品は入札がある時もある。企業側はそう簡単に定価を変えられない。
そう、定価設定は超重要なんです。


2020年1月3日金曜日

PacBioのおもひで その11 買収無くなった?

明けましておめでとうございます

PacBioの思い出話のこのシリーズ、まだ続きがあったのですがアップデート失念していました。昨年最後のアップから色々ニュースがありましたのでまとめますね。


  1. 2019年の4月、HGM(Human Genome Meeting)会議が韓国であって、その日にSequel IIをアナウンス! SMRT CellのZMWがいよいよ800万個になったのです! この話は私がまだPacBioの担当をしていた頃からありましたが、ようやく形になったのかと思うと、とても嬉しかった
  2. しばらくして某ラボにSequel IIが入ったことを聞く 形はSequelと同じだけどラベルが違うのはRS とRSIIの時と同じかな

でもなかなか買収は進まない(イルミナによるPacBio買収ね)

その理由はイギリスのUK Competition and Markets Authority (CMA)が、この買収によりイルミナ社が市場を独占することになる、という見解を示していたから。裏事情は知らないけれどね

買収期限が延長され、延長され、その度に株価は上がったり下がったり。
そしてついに12月17日、アメリカの連邦取引委員会もこの12億ドルの買収に待ったをかけた。 FTC Moves to Block $1.2B Illumina, Pacific Biosciences Deal

アメリカさえも買収に反対するのか!

そしてついに昨日 2020年1月2日
Business Wire こちらの記事です

おおおおおおーーーー!
買収無くなったよー!

なんていうか、こういう企業買収が無くなる話、昨年のサーモフィッシャーによるキアゲン買収断念のニュースが大きかったけど、インパクトの比じゃないなあ

というわけで2020年もよろしくお願いします