NHKの、「探検バクモン」という番組で、東京国立近代美術館フィルムセンターの潜入をやっていました。
名画から普通の映画、珍しい映画や成人映画まで、およそ6万5000本の国内映画のマスターフィルムを、国が保存しているそうです。こんな施設があったとは知らなかった!
「仕分け」されなくて良かった。
目からウロコだったのは、フィルムというのは原料にセルロースを含んでいるので、高温多湿に弱く、ほっておくと酸化してしまってすぐにダメになってしまうそうです。
ここでは温度5度、湿度40%の秘密の倉庫で管理しています。
フィルムって、有機物だったんだ、って思いました。
有機物って言えば、SMRT Cellもそうなんです。
PacBioでシーケンスに使われる、あのタテヨコ1cmくらいのチップです。
SMRT Cellにある15万もの穴は、ZMWと呼ばれ、その底でシーケンス反応が進みます。
穴の底にはビオチン分子があらかじめ接着されていて、反応溶液+ライブラリーを入れたときに、ライブラリーに結合しているポリメラーゼがビオチン分子に結合し、底に固定化されるわけです。
Korlach et al., Selective aluminum passivation for targeted immobilization of single DNA polymerase molecules in zero-mode waveguide nanostructures. より
ビオチン分子をZMWの底に接着させる作業は、Cell作製の比較的早い段階で行われます。
かなりシークレットな情報なので大雑把に言うと、半導体のウエハーってわかりますか? 丸い大きな薄い板みたいなやつです。あれ一枚から数百個のCellができるのですが、最初にZMWという穴をあけて、ビオチン分子を接着させます。
その後、穴以外を薄いガラスでコーティングしたり、洗浄したり、1個1個にしたり、60以上の工程を経て、晴れてSMRT Cellが完成します。
以上はダストフリーの、本当に半導体工場みたいなところで行われています。
というわけで、SMRT Cellには、出荷段階で各ZMWに、すでにビオチン分子がくっついています。
これは紛れもなく有機物なので、温度と湿度に弱いのです。
使用期限があるのはそのためです。
ところで最近見た映画は何?と聞かれて、
「アベンジャー」と答えるのはダメですか?
ちゃんとフィルム映画をみなきゃいけませんね。