2014年1月27日月曜日
遺伝子検査会社淘汰の時代が来る
今年に入って、遺伝子診断・検査関連のニュースが多く目につきます。
某芸能人の息子の父親が違ったとか、あの話題のせいかな?
いや違います。もっと大きな、時代の必然なんです。
正月明けも間もない、1月8日の読売新聞の一面は、「遺伝子ビジネス 認定制に - 悪質検査に歯止め」
経済産業省によると、国内で遺伝子検査ビジネスをする業者は、2012年現在、約740社あるらしい。
740社ですよ!
うち15以上の業者は、アメリカや中国の代理店だそうです。
想像はつくが、サービスの質は玉石混淆。中には科学的根拠の薄い結果で一般人を不安にさせて、ツボを買わせるような(笑)、そんな会社もあるんでしょうねえ。
ちょっとググればいっぱい出てきます。「遺伝子検査」をビジネスにしている会社。
特にアンジョリーナ・ジョリーの乳がんの遺伝子検査が話題になった去年、一般人にも広く、「遺伝子を調べたら病気のリスクとかがわかるらしい」という認識が広がったと思います。
でもね、このブログを見てるひとの常識は、一般人の常識とはかなりずれていると思うんです!
あ、ごめんなさい。
一般常識ではなくて、遺伝子検査に対する知識とその常識、という意味です。
試しに、DNAと遺伝子、SNP、遺伝子に起因する疾患、とは何かを、あなたの親戚や近くの文系女子/男子に説明してみて下さい。
認識がとんでもなくズレていることに気付くはず。
これは仕方ないんです。 学校で学ばないんですから。 高校でも、メンデルの実験でエンドウマメのしわがどうとかこうとかで終わりでしょ。 私の時代はそうでした。
大人になってからはさらにたちが悪く、テレビなどで「遺伝子」や「遺伝」、「DNA」という言葉が間違った意味で使われる。
曰く、創業者の遺伝子
曰く、技術立国ニッポンのDNA
曰く、アスリートの遺伝子
受け継がれるもの、社風、才能、という意味で使われることがとても多い。
マーケティング用語としてはとても良いけれど、基礎になる知識が無いところに、造語が入ってくると、本当の意味がわからないまま間違ってインプットされていまうのがとても怖い。
良い遺伝子・悪い遺伝子、なんて無いのに、多くの一般人は存在すると信じていますよ。
私たちは、GenotypeとPhenotypeの間に、何らかの関連があることはわかっています。
多くの科学者が、その関連性を研究しています。
同時に、Phenotypeによっては、Genotype+環境要因・外的要因が大きく影響することもわかっています。
私は医者ではありませんが、病気の多くは、Genotypeが関連していると思います。それは否定しません。
しかし単一遺伝子がトリガーとなる病気は乳がんなど一部を除いてそれほど多くないと思います。
また、Genotypeで発症が100%断定できるほど、単純ではありません。
そこで、確率の登場です。
平均と比べて、あなたの将来の病気のなりやすさを確率で示してくれる。
それが多くの、例えば23andMeなどの簡易遺伝子テストの結果です。
この、確率というものもまた厄介で、人によって印象が違う。
「ある病気にかかる確率が平均と比べて1.5倍高い」と言われた時、これを高いと見るか、低いと見るか。
競馬やってるひとなら「たったの1.5倍か」で、現物で株やってるひとなら「1.5倍もあるのか」、になるかもしれない(笑)。 まあ、そのひとが理系では無い、という前提でね。
遺伝子検査.comというサイトがあるんですが、ここはさらに、人間の才能も遺伝子検査でわかる!ということを謳い文句にビジネスしてます。
これを見て一般の人は、「遺伝子検査ってすごい!」って思ってしまうでしょう。
勿論あなたは全く違った印象を持つと思います。
遺伝子検査と十把一絡げに言っても、Genotypeを検査するまでのテストと、Phenotypeを予測する検査・テストは違いますね。
これは良く混合されて議論されるので、はっきり分けないといけないと思う。
親子鑑定や犯罪現場のDNA鑑定は、Genotypeの検査でほぼ100%正しい。
だから一般の人は、その他のPhenotypeの解釈も含めた遺伝子検査・テストも100%正しいと勘違いしてしまう。
今度遺伝子検査やテストのニュースがテレビに出たら、注意して見てみて下さい。
タレントのコメンテーターの話すレベルが、一般人の感覚のバロメーターです。
そう注意して見ていれば、普通の人の感覚がわかります。
今の多くの簡易検査会社は、特定の遺伝子を調べたり、SNPアレイで既知のSNPを調べています。
そこで今までGWASやらでわかっている情報を基に、疾患のなりやすさや薬の代謝のされやすさなどのPhenotypeをレポートしています。
私も2年前、23andMeの検査をしました。 多少SNPの知識があれば、それなりに面白い。
SNPの情報が随時アップデートされていて、勉強にもなりました。
でも、最近、こんなブログを見つけて、「ああやっぱりねー」という気分にもなりましたが。
まあ、740社もあれば、中には疑わしい悪質業者もいるでしょう。
今は規制が無いのでやりたい放題。 いつか事件を起こして、「遺伝子検査は嘘っぱちだ!」みたいな世論ができる可能性も十分ある。 それは怖いです。」
でも将来、遺伝子の検査は、確実に医療に貢献していくと思います。
ゲノムを解読して、個人のゲノム情報を基に、医師が治療方針を決めたりする時代は、近い将来必ず来ます。
そして、遺伝子という言葉やゲノムという言葉が、ますます一般的に使われるようになります。
ですから、国民が遺伝子の正しい知識を持つことが必須になってくるんです。
騙されないためにも!
つい最近も、ソニーがヒトゲノム解析ビジネスに参入するニュースが流れました。
2月にP5という専門会社を立ち上げるそうです。
今年はそういう大きなニュースが他からも出てくるでしょう。
ベンチャーもどんどん出てくるでしょう。
そんな中、認定制になって、悪い業者は淘汰されることを祈ります。
何といっても個人ゲノムは大きな財産・ビッグデータです。
私もシークエンサーやってますから、そういう話は良く聞きますし、時代についていくためにフォローしています。
医療、製薬、保険、IT、それぞれの業界が絡んだ大きなビジネスで、いずれ、そこからゲノム企業の巨人が登場するんじゃないか、と勝手に想像してます。
そんな小説が書けるかもしれませんね。
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