NGS現場の会・第3回研究会で、PacBioのリードがあと2か月で平均8.5Kbpに伸びる、と発表しました。
試薬・酵素と、Movie時間のアップデートで可能になるのです。 もうリリースしてユーザのアップデートもほぼ完了したのでこの話は年明け前にしておかないと。
先ず、試薬・酵素
PacBioの酵素はPolymeraseでP、試薬はChemistryでC、と表します。
組み合わせは、P4C2とか、P5C3とか、で略します。
といっても、少し前まで、XL酵素とXL試薬、C2酵素とC2試薬という厄介な名前のものがあり、XLC2、XLXL、C2C2と略すとどっちがどっちだ!ということも良く聞かれました。
ちなみにXLC2はXL酵素とC2試薬、XLXLはXL酵素とXL試薬、C2C2はC2酵素とC2試薬の略です。
それがややこしいというのはアメリカでもクレームがあったらしく、これからはPとCではっきり分かるようにさせたということらしい。
それはともかく、今のシークエンスに使われているのは、P4C2です。
P4は、2013年の夏ごろリリースした酵素です。
C2酵素よりも安定してロングリードを作ることができる酵素です。
P4C2で読んだとき、120分Movieでは平均リード長4500bpを出していました。
C2試薬(酵素では無い)は、ヌクレオチドと蛍光色素の距離が近く、レーザーが照射したとき、蛍光色素からのエネルギーが酵素に移動するため、それによって酵素の活性が失われやすいという欠点がありました。
そこで、ヌクレオチドと蛍光色素の間に、分子を入れて、レーザーによる励起エネルギーが酵素に届かないように改善、これがC3試薬の登場です!
左側がC2試薬と酵素X、右側がC3試薬と酵素X
Protecting Scaffoldというのが、ヌクレオチドと蛍光色素の間に新たに挿入した分子です。
これがC3
C3試薬を使うと、レーザー光によってDye(蛍光色素)が出すエネルギーが、Protective Scaffold(分子)によって遮られ、酵素には届かない、という図
こうしてC3試薬が生まれ、酵素との組み合わせ実験がR&Dにて行われました。
P4酵素とC3試薬はあまり組み合わせが良くなかったのです。
夏前からいろんな酵素を試していて、最終的に残った、一番成績の良い酵素君が、P5と名付けられました。
次にMovie時間アップデートの話
今までは120分がMovie時間のMaxでしたが、これを180分まで読めるようにしました。
Movie時間を変えるのはソフトウェアをちょっと変えれば可能なので、実は、酵素が180分たっても大丈夫、になったことの方が大きい。
120分で読んだ時の1.5倍かかるわけですから、1日何セル読めるかは、新たに計算する必要がありますね。
今までは120分Movieで8セル読むとすると、機械にセットしてからデータ転送が終わるまで20時間くらいでした。180分Movieだと、おおよそ28時間。
以下のグラフは、カタログでも登場するものです。
大腸菌ゲノムで、20Kbpライブラリを作り、Blue Pippinでサイズセレクションして、180分Movieで読んだ時の平均データです。
平均リード長5500bpのP4C2は、今まで通り、デノボアセンブリやcDNAシークエンスなどに向いています。
同8500bpのP5C3は、精度がP4C2に比べて低いので、今のところスキャフォールドへの使用を推奨しています。
私たちもそのうち、こうしたデータを公開しようと思います。
でも、ポリメラーゼリード単位のデータでは、へー、で終わってしまう。
やっぱりサブリードのグラフも欲しいし、実際アセンブリした結果も欲しい。
なので、公開するときはそういうデータも一緒に。
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