2014年4月21日月曜日

少量DNAスタートのプロトコル

先週、東京にて、PacBioのユーザ様を対象にした、ウェット・ドライ両方の2日間トレーニングが開催されました。
PacBio本社からは2名のトレーナー、PacBio Asiaオフィスからも2名、マレーシアユーザも2名参加し、全体としては20名を超え、内容の濃いトレーニングができたと思います。
皆さん、それなりに満足されたのではないでしょうか。

そこで取り扱ったテーマは、Iso-Seq(cDNAアイソフォームシークエンス)、Large Genome Assemblyの2つ。
ミニテーマとして、サイズセレクションに使うBlue Pippinのアップデート、少量DNAからのシークエンス、分解ゲノムDNAのシークエンス、の3つがありました。


そこで、本日は、少量DNAからのシークエンスについて少し紹介しようと思います。
これは、Pac公式のプロトコルではなく、シェアードプロトコル(R&D部門やカスタマーが考えて、みんなとシェアしているプロトコル。頻繁に更新される)です。

普通のプロトコルでは、PacBioのSMRT bellライブラリシークエンスには、数マイクログラムオーダーのDNAが必要です。

ゲノムDNAのShearing後に、DNAが約5 ug得られたとして、そこからSMRT bellライブラリを作製すると、一般的な回収率は約20%なので、ライブラリは1 ugできます。
不純物が混ざっている場合などは、MoBio精製をしますので、実際には1ugを切ることは多いでしょう。
なんでこんなに回収率が悪いのかというと、Exo ヌクレアーゼ処理をしてNickの入ったDNAを分解したり、AMPureビーズ精製を繰り返したり、アダプターライゲーションをしたりするためです。
その各ステップごとに、DNAは失われます。

さて、20Kb のロングライブラリを作ってシークエンスしたい場合、Blue Pippinでサイズセレクションがほぼ必須なのですが、これに必要なDNA量は、500ngです。これ以上DNAが無い場合はサイズセレクションができません。

もちろん、サイズセレクションしなくても、シークエンスそのものは可能です。でもその場合、かなり短いライブラリが多く含まれてしまいます。

さて、サイズセレクションした場合、ロスする割合は、カットオフ値とサンプルによりばらつき(経験上50~80%)があります。
Blue Pippinの回収率を仮に20%をすると、200 ngです。

でも、この後またAMPure精製を行うので、これで流せるSMRT Cellの数は、およそ10です。
何十セルも流すようなプロジェクトには、相当多くのDNAが最初に必要だということがお分かりになるでしょう。

しかし、多くのデノボプロジェクトの場合、マイクログラムもDNAが取れないことが多い!
数十ng しか取れない、なんていう生物もいると思います。

そんなときのシークエンスプロトコルがこれ、Carrier Plasmidを使ったライブラリ調整法です。

環状のpUCやpBRプラズミドを、SMRT bell作製の最終段階で加えるのです。

環状プラズミドをまず、Exoヌクレアーゼ処理し、Nickのあるプラズミドを分解します。
少量ゲノムDNAは、普通のプロトコルと同じようにライブラリ作製を進めます。そのかわり、量を節約するため、途中でサイズを測ったりはしません。

アダプターが付けられた微量のSMRT bellに、環状なプラズミドを500ng加えます。
そして、SMRT bellとプラズミドを一緒にしたまま、最後のExoヌクレアーゼ処理をします。

その後、AMPure精製、プライマーアニーリング、ポリメラーゼ結合、に進みます。
もちろんその際のプライマー、ポリメラーゼの量は、微量SMRTbellの推定量に合わせます。

そして、シークエンスに移ります。
シークエンスは、SMRT bellと、環状プラズミドの両方が混ざったまま行われるのですが、環状プラズミドには当然アダプターがないのでプライマーもアニーリングせず、結果ポリメラーゼが結合していないので、ZMWの底には固定されない。
SMRTbellだけがZMWの底に固定され、シークエンスされることになります。

これがキャリアープラズミドを使った少量DNAスタートプロトコル。 

公開されているプロトコルは、2kbから10kbのサイズのライブラリ用で、Blue Pippinサイズセレクションもしません。

しかし、20kbライブラリを作ってBlue Pippinを流すときも、プラズミドを加えて全体の分子数を上げることで、サイズセレクションも原理的には可能です。

このプロトコルはまだまだ改良の余地ありで、完全なものではありません。
私たちのところでも、一度、20kbライブラリのランで、このプロトコルを試しました。
データについては、悪くは無い、というか、一昔前のRSのスループットと変わらない感じでした。
詳しくは、5月16日(金)の、「PacBio現場の会」セミナーで、紹介しようと思います。

このセミナーですが、先週レジストレーションを開始しました。
ここから

定員100名なので、参加登録はお早めに!



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