長年この仕事をしているとたまに、別々の研究者からほとんど同じ研究内容の話を別々にされることがあります。
例えば所属が違うAさんとBさんから、全く同じ生物種の、非常に近い研究テーマの話を、別々にされる。
あれ? もしかして共同研究者? って思ってしまうけれどもそこは要注意です。
とりあえずその場では初めて聞いたふうに取り繕って、後で名前をググって確かめます。
経験上、50%以上の確率でそういう場合は競争相手。
(注:フィールドによって若干その割合は違う。植物系は共同研究の確率高い。動物系は半々。医学系はほぼ競争相手だ!)
守秘義務があるのでもちろん聞いた研究内容は誰にも言いませんが、競争相手同士からほぼ同時に相談あるいは話をされたときは細心の注意を払います。
そんな時は聞き役に徹すべし
さて、ほぼ同時に、薬草を材料にしたIso-Seqの論文が3本出たそうです。
韓国・中国・インド・オーストラリアのチームから。
材料はそれぞれ違うのでかれらは競争相手同士ではないでしょう。
そのうちのひとつ Panax ginseng(オタネニンジン・高麗人参・朝鮮人参)は、異質四倍体の3.2Gbゲノムと結構複雑なんですね。
リピートも多く、読みにくい。
そこでIso-Seqを行って完全長トランスクリプトーム解析を行った。
Jo et al., Isoform Sequencing Provides a More Comprehensive View of the Panax ginseng Transcriptome
組織は4か所から採取
RSIIを使っているので、サイズセレクションをしています。
1‐2kb、2‐3kb、3‐6kb、6kb以上、という風に4区画ですね。
サブリードがトータルで822万本取れています
そこからcDNAをフルでカバーしていて、Isoformごとにクラスタリングして、クオリティも良いものだけをフィルタリングしていくと、
このテーブルの下の数字くらいの数、合計17万4000本くらいになる
ご存じかもしれませんが、Iso-SeqはSequelではもうサイズセレクションをしません。
そのまま全部のサイズのcDNAでライブラリを作り、一気に同じセルで流します。
ここに書きましたので参照下さい
Iso-Seqは、遺伝子のスプライシングイベントを正確に読むことができる、単純かつ素晴らしいアプリケーションだと思っています。
ゲノム配列が完全にわかっていないような生物でも、cDNAの完全長を読めば、ある程度どんな遺伝子が発現していたのかがわかるので、非モデル生物の研究にもかなり使われてきています。
今年はそういった成果が次々に論文になりました。
今の論文なので実験をした当時はRSIIですから、サイズセレクションを必ずしています。
来年あたりはSequelを使った、サイズセレクション無しの論文も期待!
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