前回、45分とか75分とか、Movieの時間を最後に書きましたが、説明が足りなかったので付け足します。
PacBioは、ほかの次世代シーケンサーと違って、DNA合成の様子をビデオで撮ります。
SMRT Cellの中には150,000のZMWがあり、この中でDNA合成が行われるわけです。
ヌクレオチドが取り込まれるときに、リン酸についた蛍光が自動的に切り離され、そのときCellの下からあてているレーザーの波長に励起して、A、T、C、Gに特徴的な波形データが得られます。
「自動的に切り離される」ので、Real Timeなわけです。
Wash & Detect ではないので、反応は止めません。
そこで、カメラによる撮影ではなく、ムービーなのです。
150,000のZMWは、ポリメラーゼが入っていなくても、とりあえずMovieは撮られます。
例えば2kbくらいのインサートの場合、それほど長く撮影しなくても良いので、30分くらい読むとします。
この設定にすると、150,000のZMWは2回に分けて撮影されます(各75,000ZMW)。
1回目のムービーと、2回目のムービーで撮影されるZMWは別々で、それぞれ30分間撮影されます。
今は例として30分にしましたが、長いインサートの場合、最高75分まで撮影することができます。
しかし、75分では1回のムービーしか撮られません。
1回のムービーで撮影できるZMWは75,000なので、75分のムービーではCellの半分のZMWしか実際は読んでいないことになりますね。
なぜ長い時間のムービーは1回しか撮られないのでしょうか。
30分を2回撮る場合は、1回目のムービーの時、読まれている75,000ZMW以外の、2回目のムービーで読まれるはずの75,000ZMWでも反応は行われているのです。
2回目のムービーでに読まれるZMWでは、もうすでに30分以上、反応が進んでいるので、ポリメラーゼが弱っています。
したがって、1回目のムービーで読まれるZMWのデータより、2回目のムービーで読まれるZMWのデータの方が、「若干弱気」です。
75分も読んだら、2回目のムービーはもうすでに75分以上経っているのでポリメラーゼはかなりヘタっていることは想像できるでしょう。
他にも理由はありますが、これも長い時間のムービーは1回しか撮られない理由です。
ちなみに、ZMW内のポリメラーゼは、1秒間に1~3くらいの塩基を合成しています。
WTのポリメラーゼはもっと高速でしょうが、それでは機械の検出技術が追い付かないので、わざと遅いMutantを作って使っているのです。
初めまして、いくつか質問がありまして不躾ながらコメントさせていただきます。
返信削除まずこちらの記事について
①何故1度の撮影でZMWは75,000ウェルしか観測できないのか、照明系かCMOSサイズの問題だろうか。
②ポリメラーゼの合成速度について、ポリメラーゼ改変体を使っているとのことだが、ポリメラーゼの基質として蛍光ラベルdNTPを使っているため、通常のdNTPより合成速度が遅くなると思うだが、その速度への影響はどの程度なのか、また蛍光ラベルdNTPを用いたことによってDNA合成の正確性は変化するのか。
一つ前の記事について
③下記表現について
>「ポリメラーゼによって合成される1本のリードに含まれる塩基が、平均して85%は正しく読まれる」
この15%の高いミスリーディングは何に由来するものか、また欠失・重複等はどの程度含まれるのか。
④
>確率的には1/3の割合(厳密にはポアソン分布)で、正しく合成が行われる状態のZMWができるわけです。
場合の数が3通りあるだけで、その3通りが等確率とは限らないと思うだが、この値は理論値か、それとも実験値か。
以上です、お時間があれば回答いただけるとうれしいです。