2015年4月5日日曜日

PacBio-LITS PacBioでターゲットリシークエンス 1

今日は4月5日、東京は雨が降って、せっかくの桜も散ってしまっています。
今年ほど、桜満開の時期が短いと感じたことはなかったなあ。
7月のNGS現場の会に向けて、「お花見メタゲノム」の試料採取が、全国で行なわれているみたいですね。
私のFacebookの友人も、採取の様子をいろいろアップしていまいた。
結果が楽しみです!

さて、今日は、PacBioではあまり今まで話題に出てこなかった、ターゲットリシークエンスの話

リシークエンスには大きく分けて、全ゲノムリシークエンスと、ターゲットリシークエンスの2種類あります。
前者はゲノム全体をガッツリ読む方法で、後者は例えばExomeなどのような遺伝子のエキソン領域だけを濃縮して読む方法です。
濃縮キットは(「エンリッチ」キットとも呼ばれますが)、ゲノム配列を断片化したあと、

  1. 取ってきたい(シークエンスしたい)配列領域にデザインされたプローブをハイブリして、エンリッチする方法
  2. 読みたい配列の両端にPCRプライマーを設計して、そこだけPCR増幅して、取ってくる方法
の2種類あります。
ハイブリ方式か、PCR増幅方式か

市場で良く聞く製品だと、SureSelect (Agilent社)や、SeqCap EZ (Roche社)などは、ハイブリ方式
Ion AmpliSeq(LifeTech社)は、その名の通り、Amplification(増幅)方式

これまで、どの方式、どのキットも、PacBioのロングリードには対応していませんでした。
PacBioで読むには、エンリッチした後の配列長が、そこそこ長くなくては意味が無い!
そんな中、ハイブリ方式で6kbフラグメントのターゲットエンリッチメントに成功したのが、この論文
Wang et al. BMC Genomics (2015) 16:214

Baylor College of MedicineのDr. Min Wangらは、彼らのエンリッチ方法を使って、Potocki-Lupskiシンドロームの患者に見られる、chr17p11.2の複雑な構造変異、Low Copy Repeats (LCRs; またはSegmental Duplications )のブレイクポイントを、検出することに成功しました。

そもそも何で、ゲノム全体を読まずに、特定の箇所をエンリッチして読むのか?
興味のある場所がゲノム全体の数%だったら、そこだけを濃縮(エンリッチ)してきて、PacBioの超ロングリードでがっつりカバレッジ稼いで読めば、かなり消耗品を節約できます。
ゲノム全部を読む必要が無いひとにとっては、エンリッチメントはかなり効率的な手段なのです。

彼らは、Roche NimbleGen社の、SeqCap EZ エンリッチメントキットを使用して、つまりハイブリ方式で、ターゲット領域を濃縮、PacBioで読むことに成功しています。
この方法は、PacBioのアプリケーションノートでも紹介され、今後、本格的に広まる予感がします。

通常、SeqCap EZのプローブは、200bpのフラグメントに対してハイブリするようデザインされています。
これを、彼らは、6000bpのフラグメントでも可能であることを示しました。

まず、ゲノムDNAを、G-tubeで10kbに断片化します。
その後、Blue Pippinというサイズセレクション機器を使ってゲル泳動し、5~9kbの長さのフラグメントだけを抽出します。
SeqCap EZ アダプターをつけたあと、増幅し、プローブとハイブリします。
ハイブリしなかったDNA断片(濃縮ターゲットではない部分)をWashして捨て、ハイブリした断片(濃縮ターゲット)を回収します。
もう一度、回収DNA断片を増幅し、それからSMRT Bellライブラリ作製にかかります。

このようにして、ハイブリ方式で濃縮したDNA断片から作製したライブラリを、実際にシークエンスしたデータは、かなりの数のライブラリが6kbのサイズを保っていたことを示しました。
実際にHG19ヒトゲノムリファレンスにマップしたところ、マップされたReads Of Insert(ライブラリの長さにほぼ等しい)の平均長は、4.3kb~4.7kb
これだけの長さのリードを濃縮できた例は、私は聞いたことがありません。

論文に出ているとはいえ、まだこのプロトコルはPacBio公式ではありません。
もし試してみたい方は、うまく行かない可能性も無くは無い、ということを頭に入れて、お試し下さい。

どんな遺伝子でもエンリッチできるのか?
SeqCapEZ のプロトコルにはどんな工夫があるのか?
データ解析ツールはどんなふうに使ったら良いのか?

などなど知りたいことはありますが、またフォローしていきますのでお楽しみに!



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