2017年9月13日水曜日

ナノポアZMWって何?

Twitterやその他SNSで知った人もいるかと思いますが、こんな論文がNature Nanotechnologyから出ています↓
"Length-independent DNA packing into nanopore zero-mode waveguides for low-input DNA sequencing"
はて、ナノポア? ZMW? そしてオーサーの一人はPacBioのCSO(最高科学責任者)?
そうです。これはナノポアとPacBioのSMRT Sequencingの両方の技術を組み合わせた新しい技術です。
どんなものかというと、今のPacBioのSMRT CellにはZMWという微小ウェルがありますね。
PacBio・SMRTシークエンスの良いところはたくさんありますが、唯一の欠点はDNA量。
ナノグラム単位のDNA(ライブラリ)をアプライする必要があります。
これをピコグラム単位にすることは、裏プロトコルはあるにはあるのですが、結構難しい。

単純に言うと、ZMWのウェルの中にDNA‐ポリメラーゼの複合体をロードする効率が悪いからです。
長いライブラリ(例えば20kb)は短いライブラリ(例えば1kb)よりもウェルに入りにくい。これをローディングバイアスという。
マグネティックビーズを使って物理的にロードする方法はRSIIの時代に確立されましたが、それでも効率よくライブラリをウェルに入れるのは今でも難しいものです。

ONTのナノポアには、ポアにDNAを通すため、ガイドプロテインをいうものを使います。
この論文にあるナノポアZMW(NZMW)は、ZMWの底にナノポア(穴)を開け、電圧を使ってDNAをZMWにガイドするそうです。

これによるとかなり効率よくDNAライブラリをローディングできるらしい。
10ピコグラムのDNAでも1分以内にローディングできるとのこと。
20kbライブラリの場合、2秒の電圧パルスの結果、DNAをNZMWに吸着できた。
ローディングバイアスも見られず、1kb~48.5kbまでのライブラリをローディングできたとのこと。
Larkin et al., Fig 2

そこまで言うと、じゃあこれが次のPacBioのバージョンアップ技術になるの?
と思うでしょう?
残念ながらこれはまだPOP (proof of principle)の段階で、すぐに商品化されるわけではありません。と、CSOのJonas Korlachも言っています。
でも実現されれば面白い。装置の改良も必要かもしれませんが。
詳しくはNature Nanotechの論文

またはGenomewebのこの記事を参照ください。

有料記事なので詳細は書きませんでした。ご了承下さいまし・・・
個別にディスカッションしましょうね

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