2015年5月17日日曜日

NGS現場の会2015まであと1ヶ月と少し

NGS現場の会、第4回大会は、皆さんもう事前登録しましたか?
我がPacBio事業部からは1つのセッション、5つのポスターを出します。

先週、東京大学本郷キャンパスの山水会館で、企業を集めた説明会がありました。
NGS関連の会社が一同に集まることはあまりありませんよね。
説明会は特に、私たちは毎回参加しているので、滞りなく終了、
その後は懇親会。

競合の会社同士が、微妙な距離を保ちつつ、ビールを注ぎあっている姿を観察しながら、いろんなひとと話してきました。

この学会は、「スーツ禁止!」とまでは言わなくとも、できるだけスーツ以外で参加することが望ましいんです。私服か、企業T-シャツ、ポロシャツ歓迎、とのこと。
暑がりの私にはありがたいです

ところで今回は7月1日から3日、つくばの国際会議場です
企業セッションは1日目にかたまっていますので忘れずに!
私も1日目の午後4時からセッションです
我々企業の連中は、セッションが終わったあと、ブース設営がありますので初日はちょっと忙しいかなあ。でも飲みは忘れない

2日目は朝8時から夜8時半までなのでかなり長い
夕方から始まるミキシングは、食べ飲みOKなディスカッションセッションですね
企業からの差出しは大歓迎と言っていましたので、今回は何を出そうかな・・・


ポスターとか企業セミナーとかで、今一生懸命話題を考えているのですが、この業界、情報のアップデートが早すぎるのです
なので直前にならないと書けない! スライド作れない!
6月中旬には書き始めて、ギリギリに完成!というふうに今回もなるんだろうなあ。

ちなみに今、セミナーのトピックに入れようと考えているのは、

  1. Target Enrichment with Roche NimbleGen kit
  2. Very large "30 kb" library construction
  3. Isoform sequencing
そして、持ち時間のうち10分くらいは、PacBioとは直接関係ないけれども面白い、NGS関連の話をしようと思います。
お楽しみに!

2015年4月14日火曜日

ターゲットリシークエンス 続き 一般論

2回にわたって、PacBioでのターゲットリシークエンスについて書いてきましたが、今日はPacBio関係ではありません
Pacは次回までお休み


ターゲットリシークエンスをした後の解析のひとつが、変異検出です。
そういえば、この「パックマンの挑戦」ブログを始める前に書いていた、「ショートリードの憂鬱」ブログでは、良くこの変異検出について書いたものでした。

見返したところ、2011年7月に、Exome 解析 non-synonymous SNVを見つけた後は・・・というタイトルで、SNV(SNP)を見つけた後に行なう解析あれこれ、みたいなことを書いていました。
今から4年前、フリーツールを駆使して、見つけたSNPをフィルタリングしたり、意味付けしたり

人類遺伝学会などでは毎年、ヒトゲノムリシークエンス、エキソームシークエンス、など、NGS(主にショートリードだけど)を使用した大規模プロジェクトの発表を聞きます。
特にアメリカは、やたらヒトゲノム読んでいますね。大きな病院を拠点にして、周辺の大学や病院と、患者ゲノム情報を共有する、、、なんて話を3年前のASHGでも聞きました。

遺伝子検査ビジネス大手、deCODE社やAmbry Genomics社も、やはりヒトゲノム、またはエキソームを読んで、検出したSNVを、データベースと照らし合わせて意味付けをしています

そういう会社、大学、プロジェクトは大抵、解析パイプラインが決まっています
どのゲノムリファレンスを使うか、マッパーは何を使うか、変異検出ツールは何をつかうか・・・等
逆に決まっていないと、後でデータ間比較をしたいときに整合性がとれない

例えば、BWAでHG19にマップしてGATKで変異コールして・・・という流れでも、途中のfastqフィルタリングやマッピングパラメータ、冗長性除去の有無など、いろいろ決めなければいけない項目はあるはずです

さて、決められたルールに従って変異が検出されたとしましょう
この後はその変異の意味付けです

意味付け?

先の「ショートリードの憂鬱」ブログにも、いろいろSNVフィルタリングを紹介したのですが、ナレッジを使った意味付け、というのもあります

ナレッジって何でしょう。これは論文や発表、色んな種類の公開データを、人間が精査して集めたデータベースです
SRA(sequence read archive)のようなNGS配列データベースは、中身のデータ量が爆発的に増えていますが、ここではナレッジに入れないでおきます。

ナレッジのわかりやすい例は論文です。
世界最大の医学生命科学論文データベース・MEDLINEは、今や2400万件の論文を保持しているそうです(5年前くらいまでは、1400万件と言っていましたからその増加分たるや!)

論文をまとめて遺伝子同士の関係や、化合物との関係をまとめたデータベースが、実は結構価値あるんですよ。
私も前職でPathway Studioというソフトを扱っていたのでわかるんですが、遺伝子を中心にして
周辺のレギュレーターとかを検索するのが、わずか数分でできてしまうんです
残念ながらこのソフトは某大手出版会社に買収されてしまいましたが

で、そのころはマイクロアレイなどの実験の解析に、論文ナレッジデータは使われていたのですが、今や時代はNGS(と言ったらアレイやっているひとに怒られるかな? アレイはアレイで、良いところたくさんあります!)

先のようにリシークエンスをして、変異解析をしたら、VCFというフォーマットのファイルでSNVを表現すると思います。
このファイルには、SNVの場所情報が記載されている
どこの遺伝子のどこに変異があったか、がわかる

そんな遺伝子が、今わかっている遺伝子間の制御関係において、どこに位置するのか?
それはどんな機能のパスウェイに影響するのか?
変異が起こったことによって、どんなフェノタイプに関連すると示唆されるのか?

というような情報がナレッジによってわかってくるのです。

さ、前置き長くなりましたが、そういうナレッジの解析をクリック&クリック、簡便化して行うことができるソフトウェアがあります。
~Ingenuity Variant Analysis~

自社の製品の宣伝になってますが、今、市場にあるどんなソフトウェアより使いやすいしわかりやすい
Pathway Studioもここまで頑張れば良かったのに・・・ と思ってしまいました

5月29日まで無料解析キャンペーンをやっています
このチラシの裏面のチャートがわかりにくい、という方、とりあえずNGS使ってヒトでリシークエンスやっていて、VCFまで出したけど、変異の絞込みこれでいいのかなあー?ってちょっと不安に思っていて、まあアンケートに協力してやってもいいかな? 
って思っているひとなら誰でも申し込みOKです
申し込みはこちら



このソフトで使われているナレッジは、人間が実際に論文を読んで集められたもの。
すごい人海戦術です。インド人恐るべし

しかし将来は、人工知能がこういうナレッジを作るのでしょうか
2045年問題(コンピュータが人間の脳を超える日)というのがありますが、コンピュータによる論文からのナレッジ抽出は、実は前述のPathway Studioで10年前に実現されていました。
もちろん完璧ではなくミスもありました。(ああ懐かしい!ちなみにPathway Studioはロシア製)


2045年は今からちょうど30年後
30年後を待たずとも、データベース検索や、もっと言えばシークエンスデータからのフェノタイプ予測などが、人工知能で全部できる時代が、意外と早く来る予感がします。
そうなったとき、世界はどうなっているのでしょうね。

今から30年後

子供の世代の生命観は、全く予想がつきません

2015年4月11日土曜日

PacBio-LITS PacBioでターゲットリシークエンス 2

ターゲットリシークエンスの話の続きです。

Roche-NimbleGen社では、いくつかのエンリッチメントキットを用意しています。
SeqCap EZ Designs というキットをPacBioでは試しているそうです。


  • Comprehensive Cancer Design
  • Neurology Panel Design
  • Human MHC Design
などなど

先のアプリケーションノートで、紹介されている例は、Human MHCとComprehensive Cancerの2つ
このアプリケーションは新しすぎるのか、まだWebsiteにUpされていません
そのうち www.pacb.com/target から落とせるようになると思います

ま、SeqCapEZ のキットで、平均6kbのフラグメントを濃縮できた、ということはすごい!
ゲノムにアラインした様子がこちら
BRCA1遺伝子、上がPacBio、下がIlluminaのデータです
PacBioのデータは、長いのでイントロンまでカバーしているので、イントロン部分のSNVも検出しています


こちらは35kbの長さの遺伝子
あれ? カバレッジが均一でない
それは、おそらく、エンリッチのときの、PCR増幅バイアスでしょうか?

PacBioで行なうターゲットエンリッチメントは、せっかくなので、ロングリードで読むことに意味がある使い方をしないといけませんね
それにはどんな使い方があるか?

ある程度場所が既知の、Fusion Geneのところだけを読む?
数遺伝子だけに絞って、その遺伝子のSNP Phasing を調べる?
そのほかにも、アイデア次第では面白い実験が考えられそうですね。

Phasingといえば、エンリッチしてPacBioで読んだデータ、Reads Of Insertをゲノムにマップした後、Samtoolsを使ってphasingを見ることができます。
Samtoolsでそんな機能があったのか!と驚いたのですが、ここに詳しくやり方が書かれています。
このツールは、SMRT Analysisが入っているサーバで行なうことが前提です
ちょっと、Reads Of Insert mappingなどの基礎知識が必要です

とりあえず、Bamファイルやリファレンスファイル、SMRTCellデータのパスなどを指定して、シェルを流すと、数分で結果は返ってきました

たくさんのファイルが出力されますが、とりあえず表示してみたいのはprefix.0 と1の二種類のマッピングファイル
これがphasingを分けている、らしい

ちなみに私はまだエンリッチされたPacBioデータが手元になかったので、HLAのアンプリコンシークエンスをわざわざReads Of Insert マッピングして、染色体6番のHLA遺伝子近辺だけを見ました

なんか、カバレッジ深すぎ…
IGVはメモリを食うので、深すぎるカバレッジはダメ

そして phase.out ファイル
これはSNP phasingの結果らしいです
PSのところにphase set のSNPが出るはずなんだが
SNPの数が妙に少ない気がする
これはHLA-A、B、Cの遺伝子部分を増幅したアンプリコンのはず


アプリケーションデータで紹介されている、もう少したくさんの遺伝子エンリッチメントのデータでは無いので、イマイチ結果の解釈まではできませんでした
ツールが動く、ということを確認したのみ
サンプルデータで試してみたいですね

というところで今夜はおしまい


2015年4月5日日曜日

PacBio-LITS PacBioでターゲットリシークエンス 1

今日は4月5日、東京は雨が降って、せっかくの桜も散ってしまっています。
今年ほど、桜満開の時期が短いと感じたことはなかったなあ。
7月のNGS現場の会に向けて、「お花見メタゲノム」の試料採取が、全国で行なわれているみたいですね。
私のFacebookの友人も、採取の様子をいろいろアップしていまいた。
結果が楽しみです!

さて、今日は、PacBioではあまり今まで話題に出てこなかった、ターゲットリシークエンスの話

リシークエンスには大きく分けて、全ゲノムリシークエンスと、ターゲットリシークエンスの2種類あります。
前者はゲノム全体をガッツリ読む方法で、後者は例えばExomeなどのような遺伝子のエキソン領域だけを濃縮して読む方法です。
濃縮キットは(「エンリッチ」キットとも呼ばれますが)、ゲノム配列を断片化したあと、

  1. 取ってきたい(シークエンスしたい)配列領域にデザインされたプローブをハイブリして、エンリッチする方法
  2. 読みたい配列の両端にPCRプライマーを設計して、そこだけPCR増幅して、取ってくる方法
の2種類あります。
ハイブリ方式か、PCR増幅方式か

市場で良く聞く製品だと、SureSelect (Agilent社)や、SeqCap EZ (Roche社)などは、ハイブリ方式
Ion AmpliSeq(LifeTech社)は、その名の通り、Amplification(増幅)方式

これまで、どの方式、どのキットも、PacBioのロングリードには対応していませんでした。
PacBioで読むには、エンリッチした後の配列長が、そこそこ長くなくては意味が無い!
そんな中、ハイブリ方式で6kbフラグメントのターゲットエンリッチメントに成功したのが、この論文
Wang et al. BMC Genomics (2015) 16:214

Baylor College of MedicineのDr. Min Wangらは、彼らのエンリッチ方法を使って、Potocki-Lupskiシンドロームの患者に見られる、chr17p11.2の複雑な構造変異、Low Copy Repeats (LCRs; またはSegmental Duplications )のブレイクポイントを、検出することに成功しました。

そもそも何で、ゲノム全体を読まずに、特定の箇所をエンリッチして読むのか?
興味のある場所がゲノム全体の数%だったら、そこだけを濃縮(エンリッチ)してきて、PacBioの超ロングリードでがっつりカバレッジ稼いで読めば、かなり消耗品を節約できます。
ゲノム全部を読む必要が無いひとにとっては、エンリッチメントはかなり効率的な手段なのです。

彼らは、Roche NimbleGen社の、SeqCap EZ エンリッチメントキットを使用して、つまりハイブリ方式で、ターゲット領域を濃縮、PacBioで読むことに成功しています。
この方法は、PacBioのアプリケーションノートでも紹介され、今後、本格的に広まる予感がします。

通常、SeqCap EZのプローブは、200bpのフラグメントに対してハイブリするようデザインされています。
これを、彼らは、6000bpのフラグメントでも可能であることを示しました。

まず、ゲノムDNAを、G-tubeで10kbに断片化します。
その後、Blue Pippinというサイズセレクション機器を使ってゲル泳動し、5~9kbの長さのフラグメントだけを抽出します。
SeqCap EZ アダプターをつけたあと、増幅し、プローブとハイブリします。
ハイブリしなかったDNA断片(濃縮ターゲットではない部分)をWashして捨て、ハイブリした断片(濃縮ターゲット)を回収します。
もう一度、回収DNA断片を増幅し、それからSMRT Bellライブラリ作製にかかります。

このようにして、ハイブリ方式で濃縮したDNA断片から作製したライブラリを、実際にシークエンスしたデータは、かなりの数のライブラリが6kbのサイズを保っていたことを示しました。
実際にHG19ヒトゲノムリファレンスにマップしたところ、マップされたReads Of Insert(ライブラリの長さにほぼ等しい)の平均長は、4.3kb~4.7kb
これだけの長さのリードを濃縮できた例は、私は聞いたことがありません。

論文に出ているとはいえ、まだこのプロトコルはPacBio公式ではありません。
もし試してみたい方は、うまく行かない可能性も無くは無い、ということを頭に入れて、お試し下さい。

どんな遺伝子でもエンリッチできるのか?
SeqCapEZ のプロトコルにはどんな工夫があるのか?
データ解析ツールはどんなふうに使ったら良いのか?

などなど知りたいことはありますが、またフォローしていきますのでお楽しみに!



2015年4月2日木曜日

PacBio RSIII - Maestro -

皆さん、PacBio RSが大きなシークエンサーだというのは知っていますよね?
横幅2メートル、高さ1.6メートル、重さ1トン
こんな大きなシークエンサーは、今後、出てこないでしょう。

でも、アメリカのあるラボでは、特注でもっと大きなマシンを導入しているんですよ。
PacBio RSIII -Maestro- 


この機械は、3ランを同時にできる、総重量5トンのモンスターマシンです。
レーザー、カメラは普通の3倍搭載
ロボット系を調整して、同じ時間に3倍のスループットを出せるようにしています。

3ランを同時にできるということは、最高で、48 SMRT Cell = 平均10Kbのリードからなる塩基が30~40Gb出力されるということ

もはや、ヒトゲノムのデノボアセンブリもこれ一台で、1~2回のランでできてしまう!

今、アメリカで2台、このMaestroは動いています。 一箇所は、Venter博士のところです。

価格は・・・ そこそこします、が、某社の10台セットに比べれば安い安い。

日本の研究室には、サイズ的に入らないでしょうね。
残念です。







と、まあここまで来て、というか最初から?気づいていたと思いますが、
これは、ジョーク!

エイプリルフール、は、昨日だったか(笑)
でもアメリカ時間ではギリギリセーフ


2015年3月31日火曜日

Structural Variant - 構造変異 PacBioでヒトを読んだら

PacBioのリードは長い
これはもうわりきっていることですが、長いリードを使ってできること、のひとつ
「Large InDel, Structural Variantの検出」を、ヒトゲノムでやるのはなかなかチャレンジングなテーマです。
なぜかと言うと、昨年(2014年)まで、
  1. デノボアセンブリするにはものすごい計算量が必要だった
  2. 平均リード長が、長いといっても5Kb(P4)、7Kb(P5)で、長いリードでゲノムカバレッジ上げるのにセル数がたくさん必要だった

もちろん、今(2015年)でも、PacBioでヒトゲノムやるにはバイオインフォの専門家が必要です。
誰でも簡単に楽チン解析!というわけにはいかんのです。

そんな中、韓国では、Macrogenという会社が、PacBio RSII を2台、HiSeq X10を、大人買いして、韓国人ヒトゲノム解析を行いました!
PacBioを買った、というプレスリリースが昨年10月だったから、たった5ヶ月余りで結果を出した、スピード感が半端無い。

以下、画像はPacBio AGBT 2015のYou Tubeからスライドキャプチャー
(その場面から観たいひと向けに時間も表示しておきます)

PacBioRSIIとHiSeqX10を使って、Blood Cell lineとGerm CellのBACを読んでいます
が、デノボアセンブリのメインはあくまでPacBioのデータ
281個のSMRT Cellでゲノムサイズの72X分のデータをP6C4で出力
Falconを使ったDiploid デノボアセンブリを行い、N50が7.3MbのContigを記録!
まあ、アセンブル結果は、PacBioすごい!の一言になるのでもう聞き飽きているひともいるでしょうね

デノボアセンブルの結果は、BACのアセンブル結果と共に、GapをFilling
BioNanoのIrysも使われたそうです
でもこれについては、本プレゼンでは軽く触れる程度です
IrysとPacBioRSIIは、親和性が高いと個人的には思っています
今度機会があったら、両方持っているユーザに聞いてみようっと

さて、本題のStructural Variant
先ずPacBioで作ったContigを、GRCh38リファレンスゲノムに対して、Symapでアンカリング
次に、アンカリングされたContigと、染色体配列を、アライメント
構造変異があったところは当然アライメントされないでしょうから、そういう箇所を "In-House Tools" を使って検出
だそうです。
In-House Toolsが知りたい!
まあ、そのうち論文になるのでしょう。そのときを楽しみに
SyMAPというのは、 比較ゲノムで用いられるツールのひとつです。
異なる種のゲノム(Contigも)配列を比較して、どこが一致しているのかをビジュアルで見せてくれるプログラム サイトはここ
フリーツールですよ

彼らはこうして、ヨーロッパ人には無い、アジア人特異的な構造変異、InDelなどを次々に発見!
おそらく、今年のアメリカ人類遺伝学会ではもっと、エキサイティングな発表があるでしょう。
韓国以外のユーザからも、もちろんね



で、Structural Variant関連でもうひとつ
こちらは前回も紹介した、CSHLのMcCombie博士らのHer2陽性乳がんセルラインのデノボシークエンスの発表

SMRT Cellのパフォーマンス、こちらはオンタリオがん研究所のデータですが、どんどん長くなっているのがわかります。
で、今は平均11kb、1セルあたり1Gbを出力していますね
きれいなデータです
これくらい、出ることもあります

 ここでももちろん、構造変異を見ています

Lumpyというプログラムは、恥ずかしながら知らなかったのですが、論文になっているようです。
ソフトクリップアライナーでアライメントされたBAMファイルをインプットとして、ゲノム位置が離れてマップされているリード情報から、構造変異の箇所を特定するツールです。
アライナーは、NOVOALIGN、BWA-MEM、YAHAなど、"Long Read" でもアライメントできるもの(PacBio用という意味ではないことに注意)を使用
LUMPYは、Illumina用に開発されたようで、ここでも彼らはIlluminaデータを使って、BWA-MEM+LUMPYで、大まかなマップ位置を確認
その後、(あまり詳しく述べていませんが)PacBioを使ったローカルアセンブリ


Her2(Human Epidermal Growth Factor Receptor type 2)遺伝子は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体と良く似たタンパクを作ります。
このHer2タンパクは、正常細胞にも存在し、細胞増殖に関わっています。
乳がんの患者さんのがん細胞では、正常細胞に比べて、過剰に発現・活性していることがわかってきたそうです。 ここにくわしい
Her2と言えば、これを狙った分子標的約、ハーセプチン(これは商品名、正式名はトラスツズマブ)が有名です。

薬学部卒でもない私が何でこんなこと知っているかと言うと、前職で扱っていたパスウェイソフトウェアで、薬とタンパクのパスウェイをいくつか作っていたからです!
こんなときに役立つとは。

ま、話を戻すと、Her2陽性乳がん細胞で、17番染色体上のHer2遺伝子が過剰増幅したときのメカニズム、
8番染色体との転座による増幅、
Her2周辺の遺伝子と共に増幅、
部分的にInversionなどされて増幅、
などの様子が、今回PacBioを使ったシークエンスで確認できた。

この乳がんセルラインは、もともとHer2が過剰発現している細胞株だとわかっているから、これをシークエンスレベルで確認できただけ、と言ってしまえばそうなんだけど、
今あるテクノロジーでここまではっきり確認できるのはPacBioのロングリードがあればこそ、でしょう!

オンタリオがん研究所は、カナダでもトップのがん研究機関。
ここにPacBioが入ったのは2011年とかなり初期です。
当初、ヒトゲノムに挑戦するのはかなり大変だったけれど、今ではこのように現実味が出てきた。
まだまだセル数はたくさんいるけれど、これでがんの遺伝子メカニズム・構造変異が発見できるなら、決して高価なプロジェクトではないのでは?
これまでのテクノロジーでは隠れていた、大発見があるかも知れませんね。



2015年3月18日水曜日

Venter博士の野望


前のブログで、AGBTのPacBioワークショップのビデオリンクを紹介しましたが、皆さん、見ましたか?
いやー時間が無くて見てないよ、という方は、とりあえずVenter博士のトークを見てみましょう。

Venterさんといえば、皆さんご存知、ヒトゲノムプロジェクトに企業として挑戦した、あのセレラジェノミクスの社長ですね。
実は、私は8年ほど前、セレラジェノミクスの会社の前を、車で偶然通りかかったことがあるのです。
そのころ彼らは何をしていたかというと、海に沈んだ古い沈没船を引き上げて、その船についていた泥から、微生物を採取し、そのバクテリアのゲノムを片っ端から読んでいたんです。
当時、次世代シークエンサーというものはありませんでした。
ですから、キャピラリーシークエンサーで読んでいたんでしょうね。
セレラ社の周りには、バイオベンチャーがたくさん集まっていたのですが、皆、「あいつは何をやっているんだ?」と訝しげに話していたのを覚えています。

さて、その後Venter博士は、Synthetic Genomicsという会社を、カリフォルニア州La Jolla(ラホヤと発音)に設立しました。
そしてまた偶然なんですが、先月、私の友人の紹介で、その会社を訪問する機会がありました。
(実は訪問するまでその会社がVenterさんの会社だとは知らされていませんでした。「面白い会社があるから紹介するよー」みたいな乗りで、そこの副社長とランチ&ディスカッションをすることができたのです)
で、その会社で何をしているかというと、Synthetic Genomicsという社名の通り、ゲノムを合成して、新しい生物を作っているのです!!

まさに究極の遺伝子組み換え生物!

生物が地球上に誕生したのが、35億年前、ストロマトライトだと言われています。
35億年の進化の中で、ゲノム情報は非常に複雑に、時に冗長性のある、無駄な情報を含んでしまいました。
それをきれいに、必要最低限の情報量にしてやれば、もっと効率的に、代謝・生産・合成をしてくれる生命体ができるのではないか?

先ずはゲノム情報が比較的単純な微生物です。

AGBT2015、Craig Venter博士の講演より
必要情報に絞れば、ゲノムはとてもスリムになります。
無駄を無くせば、例えば、バイオエタノールなどの生産をもっと効率的に高めることができます。
このようにして、人間の生産活動に有望なゲノムを作ることを、彼らは目指しているのです。

で、最初の話に戻るのですが、沈没船についていた泥に含まれていた微生物のゲノムを、なんで彼らは読んでいたのか。
それは、人類にとって有益な微生物を、真っ先に手にするため。
将来的にゲノムを改造して、より良い微生物を作り出すため
の、大きなプロジェクトの第一歩だったのではないでしょうか。

そう考えると、Venterさんの先見の明はすごい!


実は私が大学時代(カナダの某大学に留学していたときですが)、Venterさんの講演を聞いたことがあります。
そのときは正直、彼の話がとっぴすぎて、科学者というよりもSF作家の話を聞いているようでした。
でも今思えば、彼は10年先、20年先をも見据えて、ビジョンを語っていたのでしょうね。

今、Synthetic Genomics社では、様々な微生物、藻や植物、昆虫など、ゲノムをがんがん読んでいます。
それに貢献しているのがPacBioのシークエンサーです。
私も見てきましたが、すごいラボでした。
さすが、カリフォルニアの一等地に構える研究所です。
バイオインフォのインフラもしっかりしていました。
専用のデータベース、ソフトウェアも設計していました。
NCBIのゲノムブラウザよりも、はっきり言って使いやすいかも。

アメリカのゲノムビジネスはすごい
日本も頑張らなくては!