さてDovetail Genomicsのユーザーミーティング報告、今回は動物に注目!
ゲノムを読む必要がある動物とはどんなものがあるのかな?
真っ先に思い浮かぶのが、畜産に重要なウシとかブタとかチキンとかですね。
その辺はもちろんゲノムプロジェクトが進んでいるのですが、今回報告するのは意外な生物とその意外な理由。
今40代の方は記憶にあるかもしれませんが、私が子供の頃毎週見ていたテレビ番組に、「わくわく動物ランド」というクイズ番組がありました。
そこで登場するのは主に野生生物。その中でも私は爬虫類が大好きだったのですが、今回のDovetialユーザーミーティングでも、爬虫類のゲノムには特に惹きつけるものがありました。
先ずは、アメリカンアリゲーター
フロリダ州の河に住む大型のワニです。
アメリカンアリゲーターの面白いところは、性の決定が卵の時の水温で決まるそうです。
摂氏33度ならオス、31度未満または35度以上ならメス、33度でもエストロゲン過多の環境ならメスが生まれるらしい。
ということは、オスとメスはゲノムが同じ。しかしオスは活動的なのに対し、メスはあまり動き回らず一か所にとどまる傾向があるそうです。
このように性決定が胚の時の温度で決まる生物はほかにもありますが、そのメカニズムは良く分かっていなかったそうで。
そこでゲノムを読んでそのメカニズムを明らかにしよう! というわけです。
論文はもうありますので詳細を知りたいひとは
こちらからどうぞ
ところがこの研究、野生のアリゲーターの卵を取りたいということで、そのサンプル採取がとってもユニーク。
ヘリコプターでアリゲーターの巣に舞い降り、母親アリゲーターの目を盗んで卵を採取するというもの。
命がけらしい・・・。
さて、次の爬虫類は、Tuatara
これなんだかわかりますか?
ああ、あれね、とわかったひとはかなりの爬虫類通
ヒントはニュージーランドと恐竜
和名はムカシトカゲ
まだピンと来ませんか?
私が子供の頃、恐竜が好きだったのですが、その恐竜の生き残りとされている爬虫類です。
まあ、そのころはまだ、恐竜は鳥に近いなんてことはわかっていなかったので生き残りというのは言い過ぎですが。
でも今でも、生きた化石シーラカンスと並ぶくらい、ジュラ紀からほとんど進化していない生物と言われているそうです。
昔はニュージーランド全域に生息していたらしいが今はごく一部、気温16度~21度の環境に残るのみ。絶滅危惧種です。
すごいのは、100年~200年とみられるその長寿。
ゲノムサイズはヒトより大きく4.2Gbとみられています。
ゲノムを決定したら、その免疫機能や性決定のメカニズム(温度で決定される)、鋭い嗅覚の秘密、長寿の秘密、などを明らかにしていきたいとのこと。
哺乳類では、冬眠するリス。
冬眠状態に入ると、心拍数は200-300bpm→5-10bpm、代謝機能は1~3%に、呼吸数も1~3%に、体温も37度→4度へと著しく低下するらしい。
ゲノム配列は深いカバレッジで読まれているがフラグメント化されていて、もっと繋げる必要があったので、Dovetailで大きく改善させたとのこと。
これも面白い話だった。
でも何といっても、私が一番興味をひかれたのは、サンディエゴ動物園が行っているFrozen Zooプロジェクトの話。
動物園というのは、動物の展示以外にも、種の保護や絶滅が危惧される種を後世に残す使命がある、と。
確かにそうです。動物園の役割は昔とは違ってきているでしょう。
例えばアメリカンコンドルは、個体数が非常に少なくなっていて、近親交雑の結果重篤な遺伝病(chondrodystrophy)を発症することが知られているらしいです。
このような種を保存するにはゲノム解析が必須で、どこまで病気を予防して個体数を維持できるかが問われているそうです。
また、シロサイの亜種であるキタシロサイは、アフリカになんとたった3頭しか生存していない!
そしてもはや交配するには年を取りすぎていて、近く絶滅することが確実です。
そこでサンディエゴ動物園のFrozen Zooでは、キタシロサイの体細胞からiPS細胞を作製することに世界で初めて成功。そのiPS細胞の株を冷凍保存しています。
もちろんゲノムも読んでいます。
将来的にはそのiPS細胞からキタシロサイのクローンを作る計画とのこと。
一見SFのような話ですが、アメリカではこのようなプロジェクトにちゃんと予算が付いていて、キタシロサイクローンプロジェクトは実際に動いています。
これ以外にもFrozen Zoonでは、地球上の絶滅危惧種を1000種以上、計10,000個体から細胞を採取またはセルラインを作り、冷凍保存しているそうです。
現代版ノアの箱舟といった感じですね。